レオナルド・ダ・ヴィンチと「アンギアーリの戦い」展
~日本初公開「タヴォラ・ドーリア」の謎~
2015年8月22日~11月23日
京都文化博物館
約半年ぶりの関西プチ美術旅行を敢行。
京都国立博物館の後、もう一つどこか行きたい。
どこにするか。琳派攻めか、フェルメールか、紅葉+仏像の期待できる寺社か。
悩んだ結果の選択は、京都文化博物館の「タヴォラ・ドーリア」展。
東京会場訪問済みであるが、東京会場では出品されず、京都会場では出品される作品が気になる。それは、
作者不詳(レオナルド・ダ・ヴィンチに基づく)
《レダと白鳥》
1500-10年頃、ウフィツィ美術館蔵
レオナルドが「レダと白鳥」に関心を持っていたことは、素描が現存していることからも、確かであるらしい。
レオナルド自身による油彩画原作が存在したのかは不明。
原作は存在したものの、あまりの生々しさのため、破壊されたとの説。
レオナルドは原寸大下絵を作成し弟子に提示したにとどまり、油彩画は弟子が制作したとの説。
ヴァザーリは「レダと白鳥」に触れていないらしい。
いずれにせよ「レダと白鳥」は人気主題で、本人または弟子による油彩画をもとに多数の模写が制作された。
そのうち、ボルゲーゼ美術館所蔵の《レダと白鳥》は、近年2回も来日、その妖しさをじっくり鑑賞できた。
今回はウフィツィ美術館所蔵の別バージョン出品。
それだけを観れば充分、と京都文化博物館に向かう。
会場は先に4階、次に3階。残り少ない会期、会場は結構混雑している。目当ての作品を求めて先に進む。やっと3階で見つける。
妖しい。レオナルデスキらしい妖しさ。ただ、妖しさ度はボルゲーゼ作品に軍配か。
印象的なのは、
白鳥なのに白くない、ブラック(他観客の注目度:皆無)。
白鳥のいやらしい目(他観客の注目度:B)。
二組の双子が生まれたのは「卵」から(他観客の注目度:特A)
背景の風景や地面の植物にも見入る。
レオナルドの素描が2点出品。いずれも「伝」や「派」が付されていない、真筆としての出品。
1点は、トリノ王立図書館蔵《人物像の習作》。筋肉メインの素描。図録上は東京のみ出品とあるが、京都でも登場。図録の記載ミスか、予定変更か。
もう1点は、ルーブル美術館蔵《騎士と龍、馬、犬の習作》。題名は4種にわたるが、馬メインの素描。本作に関しては、会場内に加え、博物館建物入口付近にも次の説明あり。
「ルーブル美術館所蔵のレオナルド・ダ・ヴィンチによる素描について、作品両面の展示を予定しておりましたが、裏面は作品保存上の理由のため、同美術館の指示により展示されないこととなりました。表面は予定どおり展示いたします。ご了承いただきますよう、お願い申し上げます。」
展示されない(展示はされているけど見えない)裏面も、馬メイン。会場にパネルが用意。
東京会場で鑑賞済みの作品は、時間の都合もありスルーするが、例外が1点。
カッソーネ(婚礼用の長櫃)の装飾画、≪アンギアーリの戦い≫と≪ピサの攻略≫の2点1対の作品。アイルランド国立美術館蔵。
じっくりと観てしまう。
制作年の1460年代前半というと、ボッティチェッリやレオナルドはまだ表舞台に登場していない。フィリッポ・リッピやウッチェッロ、ポライウォーロ兄弟、ゴッツォリ、かなり高齢だがドナテッロの時代。メディチ家では、コジモが亡くなり、病弱のピエロが継ぐ時代。その時代の、おそらく人気の工房の作品だったのだろうなあと、ちょっとフィレンツェのその時代の雰囲気を感じさせる装飾的な戦争画。
本展は、京都府・トスカーナ州経済交流記念事業、京都市・フィレンツェ市姉妹都市50周年記念事業でもあるらしい。
これで今回の関西プチ美術旅行は終了。次回はいつになるか。