北宋書画精華
2023年11月3日~12月3日
根津美術館
「きっと伝説になる」
日本で初めての開催となるという中国・北宋時代(960〜1127)の書画の展覧会。
会期最後の3日間(12/1〜3)限りで出品される国宝《桃鳩図》を見るために、本展を再再訪する。
個人蔵である《桃鳩図》は、所蔵主の方針により、「10年に1度、1週間のみ公開」だという。
21世紀の公開状況は、次のとおりらしい。
・2004年4月29日〜5月5日(7日間)
根津美術館「南宋絵画 才情雅致の世界」展
・2014年11月18〜24日(7日間)
三井記念美術館「東山御物の美」展
・2022年11月3〜6日(4日間)
京都国立博物館「茶の湯」展
今回2023年12月の公開は、10年に2度目となるが、2022年とあわせて7日間ということで調整しているのだろう。
私的には2014年に1度見ているとはいえ、今回を逃すと次の機会に見られるとは限らない、と中国絵画に関心希薄であるにもかかわらず再再訪。
日時指定入場券は既に完売で、当日券目当てであるが、運良く、購入にそれほど待つことなく入場できる。
会場内は、過去2度の訪問時と比べて倍以上の人がいる感じ。
《桃鳩図》の前にも、《猫図》(伝)徽宗 の展示の時を大きく上回る人だかりができていて、単眼鏡片手の人も多数。
私も単眼鏡片手に人だかりに加わる。
国宝《桃鳩図》徽宗筆
中国・北宋時代 1107年、個人蔵
28.6×26.0cm
北宋第8代皇帝の徽宗(1082〜1135、在位:1100〜25)。
政治に疎く、趣味に没頭し国を滅ぼした「亡国皇帝」のイメージがある一方で、「風流天子」と称されたほど、書画骨董を酷愛し、自らも当時を代表する書画家であったという。
本作は、徽宗26歳の作とされる。
小さな画面に、側面から描かれた一羽の緑鳩(あおはと)と一枝の桃の花。
鳩の体の丸み、目、緑のグラデーション、茶色や黒、羽毛の柔らかい質感、枝のひろがり、などを凝視する。
画面からの距離がもっと短ければなあ、と思う。
重文《寒林重汀図》(伝)薫源
中国・五代10世紀、兵庫・黒川古文化研究所蔵
「人物が描かれている、傘をさした人物も描かれている」を単眼鏡により、やっとのことで確認する。
会場内解説の「画面左下」との情報に基づき、画面左下といっても範囲が広いなあと思いつつ、周りの人たちがあそこにいると声を上げているのにまだ見つけられない自分に焦りつつ、その人たちの単眼鏡の向きを参考としつつ、肉眼と単眼鏡交互で凝視を続け、やっと見つけたときの嬉しさ。
これほどの大画面で、人物のこれほどの小ささ。
小ささに加え、他の描線と重なって、線や色もかすれているので、知らなければ単眼鏡でも気づくことはないだろう。
しかし、これほどの大画面で人物のこれほどの小ささは、自然と人間の関係を表しているのかもしれない。
展示室1では、上記の他、国宝《孔雀明王像》京都・仁和寺蔵 の、繊細なグラデーションを伴う彩色や三面六臂の左右面の暴悪相などを凝視する。
展示室2は、李公麟筆《五馬図巻》東京国立博物館蔵 の鑑賞待ち行列で埋め尽くされている。
作品の前に立てる人数を絞り、一人が立ち退いたら次の人が前に立てる仕組みにしている模様(あるいは、時間制限制かも。展示室2の鑑賞は今回パスしたので、仕組みをきちんと確認せず)。
展示室5は、書蹟と船載唐紙の展示。
国宝《古今和歌集序(巻子本)》大倉集古館蔵 の唐紙の鮮やかな色彩とその装飾模様に見惚れる。展示方法や照明を工夫しているらしく、装飾模様がバッチリ見えると評判のようだ。
中国絵画の魅力に開眼!には依然至らない私だが、作品群を楽しむ。