大津絵 - もうひとつの江戸絵画
2020年9月19日〜11月8日
東京ステーションギャラリー
これほどの数をまとめて観るのは初めてである。
江戸時代初期(寛永年間)に、東海道の大津周辺にて描き始められ、東海道の旅人たちの安価かつ手軽な土産絵・護符として大量生産され人気商品となり、江戸時代の終焉とともに姿を消していった大津絵。
約150点の展示。
初めて認識したことは、画題が限定されていること、画題ごとに形式・色彩が定型化されていること。
画題について、画題=作品名と見なして本展出品作の作品名を数えると、70画題となる。この数だと画題の種類はそこそこあるように思えるが、作品名は違ってもマイナーチェンジであったり、そもそも同じようなテイストであるので、同じ画題を繰り返し見せられているような感じとなる。
本展出品作で1点、図巻物(福岡市博物館所蔵、旧吉川観方コレクション)があり、26画題が取り上げられている。
この26画題は、他出品作には見られない画題も少数ある(「住吉踊」など)ものの、他出品作に多く見られる画題の大半をカバーしているので、これを見れば、大津絵の人気画題を把握できると言えそうである。
また、画題によって形式や色彩が定型化されているが、これは生産の効率化を追求した結果らしい。
そのため、違いと言えば、鬼の足の爪が2本か3本かであったり、工房あるいは時代によってのちょっとした描きぶり(例えば目の描きぶり)から来る特徴であったりして、鑑賞側としては、作品による印象の違いは、主に保存状態の良し悪しによる部分が大きくなる感。
本展出品作の画題(作品名)トップ10
1位(12点)
鬼の念仏
2位(7点)
傘さす女
外方梯子剃
鷹匠
座頭
長刀弁慶
7位(6点)
槍持奴
8位(5点)
瓢箪膾
大黒
五人音
花売娘
塔
青面金剛
次点(4点)
鬼の行水
鬼の三味線
提灯釣鐘
藤娘
女虚無僧
鍾馗
本展の展示構成は、画題別あるいは制作年代別ではなく、過去に誰が所蔵していたか別となっている。つまり、明治以降の大津絵蒐集・受容の歴史。だから、本展のキャッチコピーは「欲しい!欲しい!欲しい!何としても手に入れたい!誰がための画か-民衆から文化人へ」。
本展の構成
1 受容のはじまり - 秘蔵された大津絵
2 大津絵ブーム到来 - 芸術家のコレクション
3 民画としての確率 - 柳宗悦が提唱した民藝と大津絵
4 昭和戦後期の展開 - 知られざる大津絵コレクター
そして「近代日本の名だたる目利きたちによる旧蔵歴が明らかな、いわば名品ぞろいの大津絵」が並ぶという触れ込みとなる。どの作品も、立派な表装。
繰り返し同じような作品が登場するが、そのためすぐに集中力が散漫になる(飽きる)かというと、個人的にはそのようなことは全くない。逆にそこが非常に楽しい。大津絵の魅力を満喫。