写真の起源 英国
2019年3月5日〜5月6日
東京都写真美術館
1)1850年のロンドンのカバ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/fd/e8d01c4300b5ceefa53ef9a038232bc8.jpg)
フアン・モンティソン伯爵(後のスペイン王フアン3世)
《リージェンツ・パーク動物園のカバ、1852年》
『写真クラブのメンバーによって制作された1855年の写真アルバム』より
1852年
大英図書館蔵
本展のメインビジュアルを担う写真。同種の動物写真が何点かあるのかと思うと、これ1点である。
このカバは、1849年8月、白ナイル川で捕獲され、エジプト副王から英国領事を通じてヴィクトリア女王に贈られる。1850年5月25日、サウサンプトンに到着し、同日中にリージェンツ・パーク動物園入り。その後一般公開。
名前は「オベイシュ」。捕獲された場所の地名に由来する。オス。ヨーロッパでは、古代ローマ帝国以来、1500年ぶりのカバ飼育らしい。
「オベイシュ」の入園で、園の入場者が増加。1853年にはメスのカバ「アドヘラ」も入園し、3頭の子をもうけるが、成長したのは3番目の「ガイ・フォークス」(メス)のみ。1878年に死亡。27年半の動物園生活であった。
英国では非常に有名な歴史的な存在のカバであるようだ。
一方、撮影者。スペイン内戦があり、ロンドンに移住、動物研究にも勤しんだらしいが。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/フアン・カルロス・デ・ボルボーン_(モンティソン伯)
よく分からない。スペイン史は複雑。
2)グレーの布
グレーの布がかけられている展示物がところどころに見られる。R指定? ではない。「常時光をあてないでほしいという収蔵者からの要望によるもので、鑑賞時は自分で布をめくって見ても問題ない」とのこと。
そんな大切な写真、私のような有り難さの分からない素人が、布をめくるなんておこがましい。と、基本は他の観客がめくるのを離れたところから見る、そのような機会がない場合は超短時間、半分だけめくる、にて対応する。写っているのは建物、植物、(普通に着衣の)人物。
3)展覧会の構成など
第1章 発明者たち
第2章 ヴィクトリア朝の文化
第3章 英国から世界へ
第1〜2章は、英国の「写真技術の発展」を見る写真群。英国(歴史、建造物、風景など)に親近感を持っている人も楽しめるだろう。カバは第2章にいる。
第3章から、鑑賞できる写真が登場する。欧州外を撮影した写真。クリミア戦争、米国の南北戦争、中東・エジプトの風景・人物、インド大騒乱、そして、日本とフェリーチェ・ベアトが登場する。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/b8/48ce82289b3111ec14cc43c026834191.jpg)
ロジャー・フェントン
《死の影の谷》
1855年
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館
クリミア戦争。当時の技術では人物は捉えられない。そこで、誰もいない戦場を選ぶ。無数の砲弾が転がる谷。もともとあった砲弾に加え、撮影者本人の手で、さらに砲弾が加えられたという。
また、日本にも写真文化が広まっていく。1891年には「外国写真画展覧会」が開催され、300点を超える国外の写真が日本ではじめて紹介される。紹介された写真として、英国人女性写真家ジュリア・マーガレット・キャメロンの作品も1点展示されている。2016年の三菱一号館美術館の回顧展に行かなかったのは悔やまれる。
*本展では、展示室入室前の手荷物検査あり。海外借用作品の保護のためとのこと。
*東京都写真美術館では、毎春、初期写真に焦点を当てる展示を行っているとのことで、2020年春は「日本写真開拓史 2ndシーズン 関東編」展を予定。