東京でカラヴァッジョ 日記

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画壇の悪魔派 - 北野恒富展(千葉市美術館)

2017年11月24日 | 展覧会(日本美術)
没後70年   北野恒富展
2017年11月3日〜12月17日
千葉市美術館
 
 
   北野恒富(1880-1947)は、金沢生まれで、大阪で活躍した日本画家。大阪を代表する美人画家とされる。美人画の広告ポスターでも活躍したようだ。
 
   北野恒富の名前は、本展の開催を知るまでは全く認識していなかったが、「画壇の悪魔派」との副題に興味を惹かれる。
   あべのハルカス美術館、島根県立石見美術館を経て、今般、千葉市美術館に巡回。
   副題は、会場によって異なる。出品構成によるものか、会場特性を考えたものか。
 
大阪:なにわの美人図鑑
島根:妖艶、秀麗、はんなり-美人画の革新
千葉:「画壇の悪魔派」と呼ばれた日本画家
 
 
 
【本展の構成】
 
第1章
「画壇の悪魔派」と呼ばれて - 明治末から大正、写実と妖艶さと - 
(明治40〜大正4年頃)
 
第2章
深化する内面表現 - 大正期の実験とこころの模索 - 
(大正5〜12年頃)
 
第3章
大阪モダニズム「はんなり」への到達 - 昭和の画境、清澄にして艶やか - 
(大正14〜昭和17年頃)
 
第4章
グラフィックデザイナーとして - 一世を風靡した小説挿絵とポスターの世界 - 
 
第5章
素描
 
第6章
画塾「白耀社」の画家たち - 大阪らしさ、恒富の継承者たち - 
 
 
 
 
   ほぼ美人画が並ぶ会場。以下、印象に残る作品。
 
 
No.4《摘草》
明治後期、大阪新美術館建設準備室
【前期展示】
 
   「清楚だが、骨太で健康的な肢体」。決して太っているわけではないが、他の美人像のようには細くない、好ましい美人像。
 
 
No.10《暖か》&No.7《鏡の前》
大正4年、滋賀県立近代美術館
【前期展示】
 
   「赤と黒の印象」を描いた2点組み作品。1点ずつ別の展覧会に出品し、「赤」単独に対して「広告風の顔、赤い長襦袢が挑発的、画品として卑属」と評されたという。ここから「画壇の悪魔派」と呼ばれたよう。ただ、悪魔派的な作品は本展前期出品作では本作だけ。後期出品か大阪・島根限りの出品か非出品か現存しないかはともかく、他にそんな作品が存在するのだろう。
 
 
No.6《願いの糸》
大正3年、公益財団法人木下美術館
【通期展示】
   水を入れた盥に星を写して織姫星と彦星の逢瀬を祈る。
   あるいは、
   水を入れた盥に梶の葉を浮かべ、星の明かりだけで針に糸を通し、技芸の向上や恋愛成就を願う。
   そんな風習をもとに描く。日本画らしい題材で好ましい。
 
 
No.44《むすめ》
大正14年、島根県立石見美術館
【前期展示】
 
   美人画なのに美人じゃないと言われたらしい。美人画らしい美人ではないかもしれないが、誰にでも変な顔に見える瞬間はある。
 
 
No.57《戯れ》
昭和4年、東京国立近代美術館
【前期展示】
 
   「緑」溢れる画面も印象的だが、カメラのファインダーを覗く舞妓さん、その顔や手の「白」がさらに印象的。東近美所蔵なら次の鑑賞機会もあろう。
 
 
No.87《幾松》
昭和16年
【通期展示】
 
   木戸孝允の妻・木戸松子(1843-86)がモデル。美人であるだけではない、聡明、度胸もある女性だったとされている。「戦時下の銃後の女性」を意識した題材。「紙の風合いに凝る」。
 
 
参考出品
ポスター複製《髙島屋(キモノの大阪」春季大展覧会)》
昭和4年、髙島屋史料館
【通期展示】
&
特別出品
森村泰昌《北野恒富・考/壱(恒富風桃山調アールデコ柄)》
平成23年、髙島屋史料館
【通期展示】
 
   同顔美人ポスターが多く並ぶなか、本ポスター(ただし複製)の女性は、なんと片胸を堂々と露出させている。森村も負けじと片胸を露出させている。
 
 
 
   前・後期で、展示替えが多数あるよう。
   前期は11/26まで、後期は11/28から。
 


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