東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

ルーヴル美術館展【その2】(国立新美術館)

2015年02月22日 | フェルメール

ルーヴル美術館展 日常を描く-風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄
2015年2月21日~6月1日
国立新美術館


 ピーテル・ブリューゲル1世≪物乞いたち≫に興奮さめやらぬ状態であるが、それにとどまらない。
 ブリューゲル以外にも、魅力的な作品が多数出品されている。

 まず、風俗画というテーマ自体が非常に魅力的である。
 室内に置かれた日常品の細部描写を見ているだけで、楽しくなってしまう。


No.13 クエンティン・マセイス
≪両替商とその妻≫

 このテーマの絵画といえば、風刺的要素を前面に出して、人物もグロテスクに描かれることが多い。
 本展でも、別の画家によるそのような作例も展示されている(No.14≪徴税吏たち≫)。
 この作品は、アントワープに生きる両替商夫婦を、落ち着きをもって普通に描いているように思える。
 金貨。室内に置かれた高価な品々。妻が読む祈祷書。
 そして前景の小さな鏡。鏡のなかには、窓と、窓から見える景色・建物と、一人の人物の姿が映っている。その細部の描写が楽しい。
 計量中の夫と、祈祷書からふと目をそらして夫の手元を見る妻の表情。
 実に素晴らしい作品である。


No.29 ムリーリョ
≪物乞いの少年(蚤をとる少年)≫

 大きな作品(134cm×110cm)。
 まずは、配置や色調が素晴らしい。
 ぼろ服を着た少年が、荒れた室内の片隅に地面に座り、蚤を取ることに集中している。
 その足は汚れている。
 少年の周り、地面には、水差し、ひっくり返った籠(籠から出ているのは芋であるらしい)、そして食べ散らかした海老(の殻)。
 物乞いを描いて「慈愛」を訴える作品とは違うような気がする。
 セビーリャの貧しい日常生活を、少年を通じて描いている気がする。


No.63 ティツィアーノ
≪鏡の前の女≫

 1515年頃作だから、画家としては初期作品となろうか。
 ティツィアーノ定番風の若い女性。
 鏡。はっきりとは見えないが、女性の後姿が映っている。
 絵の状態も良く、実物はポスター以上に惹かれるものがある。


No.38 フェルメール
≪天文学者≫

 フェルメール来日20点目。
 ルーブル美所蔵の2点のフェルメールはいずれも来日したこととなる。
 フェルメールとしては2点しかない男性がモデルの作品。
 さすが目玉作品、人だかりができている。

 なんか全体的に霞んでいる。もっとくっきり、を想定していたが。
 天球儀(1600年にホンディウスが刊行したものらしい)。
 その前の白っぽい円形の器具(天体観測のためのアストロラープ(星辰儀)らしい)。
 後方の箪笥に掛けられた円からなる図(星座早見表らしい)。
 男性の手前に置かれた書籍(開いている書籍は1621年刊の『天文学・地理学案内書』と判明しているらしい)。
 円形の器具とそれに連続するタペストリー上部あたりには、フェルメールらしい光の粒子が認められる。

 うん、いいものを観た。
 フェルメール作品の場合、随分遠くからの鑑賞を余儀なくされる場合も多いが、今回は距離の問題はない。さらに、単眼鏡をもっての鑑賞であれば、完璧である。

 以下近年の来歴(Wikipediaより)
 1880年代以降、フランスのロートシルト家が所蔵。
 ナチスに押収される(そのため、裏面にはナチスの所有物を意味した小さな鉤十字が黒いインクで刻印されている)が、第二次世界大戦終了後に返還。
 1983年、遺産相続税の一部現物税としてフランス政府に納入。以降、ルーブル美術館に展示。


以上、ポスターに利用されている主要4作品について記載した。
いずれも非常に魅力的な作品である。



コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。