ボテロ展 ふくよかな魔法
2022年4月29日〜7月3日
Bunkamuraザ・ミュージアム
南米コロンビア出身の現役の美術家、フェルディナンド・ボテロ(1932〜)の個展を再訪する。
(株)ウィンダム様のご案内によるブロガー特別内覧会に当選し、参加させていただいたもの。
90歳を迎えた作家本人の監修のもと、初期から近年まで、油彩を主に水彩・素描などその多くが大画面の70点が出品される本展。
老若男女すべての人物、すべての動物のみならず、すべての静物も、ふくよかで、ユーモラスで楽しい。
また、ユーモラスで楽しいだけではない、ボテロ作品の別の面も見る。
*以下写真は、本展主催者の許可を得て撮影しています。
【本展の構成】
1章 初期作品
2章 静物
3章 信仰の世界
4-1章 ラテンアメリカの世界
4-2章 ドローイングと水彩
5章 サーカス
6章 変容する名画
1章 初期作品
1949年制作の1点と1959-61年制作の3点。
後者3点の人物像は、既にふくよかで豊満。
この作風で何を表現するのか、どこまでできるのか、探究しているような感が強い。
会場内解説によると、1961年に、ニューヨーク近代美術館が1959年制作の一枚の絵を購入したおかげで、ボテロは商業的成功を収めることとなったという。
その作品《12歳のモナ・リザ》(本展非出品) は、1963年にメトロポリタン美術館でレオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》が展覧されたとき、ニューヨーク近代美術館のエントランス・ホールに展示されたことで、一夜にして、ボテロの名前がニューヨーク中に知れ渡ったとのこと。
〈参考:本展非出品〉
ボテロ《12歳のモナ・リザ》
1959年、ニューヨーク近代美術館
2章 静物
1970〜2008年制作の、丸々とした静物画10点。
いずれの作品も、ユーモラスで楽しい。
《洋梨》1976年 は、大画面いっぱいに丸々とした洋梨1個が存在感を示すなか、
虫がひょうきんな表情を覗かせている。
3章 信仰の世界
1992〜2015年制作の、丸々としたキリスト、丸々とした聖母マリア、丸々とした聖女たち、丸々とした天使、そして丸々とした高位聖職者たち9点。
いずれの丸々さも、ユーモラス・楽しいではなく、皮肉の色に染められている感。
4-1章 ラテンアメリカの世界
1987〜2016年制作の、丸々としたラテンアメリカの人々17点。
庶民の生活のちょっとした楽しみ、生活の労苦、人生の悲劇・・・、ユーモラス、楽しい、そして哀しい。
《横顔の女》1999年 は、王道のプロフィール像の存在感。
《バーレッスン中のバレリーナ》2001年 は、ふくよかな体型と極細の足首で、片足立ちする絶妙なバランス。
《通り》2000年 は、往来する人々、ラテンアメリカの人種のモザイク。
《寡婦》1997年 は、室内で小さな子供たち&猫にまとわりつかれながら涙をこぼす女性。
母子&猫とも丸々としているが、苦しい生活を連想させられる。
《泣く女》1998年 は、小画面だが、これを他展示作品と同様の大画面だったら、その顔を直視できないかも。
私的に悩ましい作品が、丸々とした《大統領》1987年 と《大統領と閣僚たち》2011年 で、政治家に対する皮肉の作品と想像するも、素直にはそう感じない。好意的でもない。ニュートラルな感じだろうか。
4-2章 ドローイングと水彩
2019年制作の、丸々とした人物を描くドローイング9点。
庶民の生活のちょっとした楽しみを表す。
5章 サーカス
2006〜08年制作の、丸々としたサーカス団員や動物を描いた8点。
《サーカスの女と子ども》2008年 は、丸々とした後ろ姿の女性と、その肩越しにこちらのほうに顔を覗かせる子ども、生活の労苦を感じさせられる。
6章 変容する名画
1984〜2020年制作の、西洋美術史上の巨匠たちの作品に描かれた人物たちを丸々とした姿に変容させた作品13点。
画家の狙いはどこにあるかはともかく、素直に楽しい。
別記事を挙げているので、本記事では省略。
本展では、通常、第6章「変容する絵画」の一部作品に限り写真撮影が可能であるが、期間限定!、5月中の金・土曜日の17時以降、展示室内の全作品の写真撮影が可能。
対象日:2022年5月6日(金)、7日(土)、13日(金)、14日(土)、20日(金)、21日(土)、27日(金)、28日(土)の計8日間
時 間:17時〜21時(閉館)まで
残すは、5月27日(金)と28日(土)!
Bunkamura地下1階のテラスでは、本展開催期間中、広島市現代美術館所蔵のボテロの彫刻で《小さな鳥》1988年 が特別展示されている。
どこが「小さな」鳥なのか。
本展は、東京のあと、名古屋と京都に巡回する。