驚異の超絶技巧!
明治工芸から現代アートへ
2017年9月16日〜12月3日
三井記念美術館
1階の案内板。
安藤緑山
《胡瓜》
個人蔵
展示室2にソロ展示される、緑山の新発見作品。
展示前室には、撮影可の超絶技巧作品が2点。
明治工芸が1点。
初代宮川香山(1842-1916)
《猫ニ花細工花瓶》
眞葛ミュージアム
高浮彫とよばれる立体的な装飾によって、咲き誇る薔薇の下で右前肢を舐める猫をあしらった花瓶。黒の上絵具と白盛によってできた柔らかな毛並みから、複雑な耳の中、そして薄い舌までもが精緻に表現されている。
現代作家が1点。
髙橋賢悟(1982生)
《origin as a human》
2015年
採取した生花を型どりし、アルミニウムを流し込んだ「焼失原型法」と呼ばれる鋳造技法による作品。死骸をかたどる美しい花。死と再生がテーマである。アルミニウムという、明治工芸とはまったく異なる素材を用いて新たな表現に挑戦している。
どちらの作品も超絶技巧!
本展は、2014年に同美術館開催の「超絶技巧!明治工芸の粋」の第2弾。
明治工芸と「明治工芸を産み出した工人たちのDNAを受け継いで、超絶技巧プラスαの機知に富んだ」現代作家の対決企画。
個人的には、明治工芸も素晴らしく、特に安藤緑山の象牙「野菜・果物尽くし」作品は大好物なのだが、今回は、初めて知る現代作家の作品のほうを興味深く見る。凄すぎる。
以下、現代作家の名とお気に入り作品を挙げる。
前原冬樹(1962生)の木彫作品。
《一刻:皿に秋刀魚》
食べ止しの秋刀魚、そのリアルさ!驚愕すべきことに、皿も秋刀魚も一体の一木造り!
《一刻:有刺鉄線》
細〜い鉄線に細〜い蔓、その細さ!
《一刻:空き缶、ピラカンサ》
空き缶の古色蒼然ぶり!
本郷真也(1984生)の鉄製彫刻作品。オオサンショウウオ《流刻》、黒ガラス《暁》。鉄の重量感と細かな仕上げ。
臼井良平(1983生)のガラス彫刻。ペットボトルは気泡入り。水の入ったビニール袋、その口部分は空間を設けず厚いガラスとしている。
満田晴穂(1980生)の《自在十二種昆虫》は、明治工芸では動かせなかった腹、顎、符節、翅など昆虫が本来動く部分はほぼ全て動くようになっているらしい。《自在蛇骨格》がまた美しい造形。
大竹亮峯(1989生)の木彫《飛翔》は、藤に止まる蝉。一木造り。木による自在作品《自在 鹿の子海老》も。
稲崎栄利子(1972生)の陶磁作品は、「数ミリの輪や針状の小さな磁土のパーツを土台に繰り返し貼り付けることで成形。その後数回の焼成を経て出来上がる、驚異的な細部の集積」、その美しい白も印象的。
春田幸彦(1969生)の七宝作品《有線七宝錦蛇革鞄置物「反逆」》はヘビ革製の鞄、ヘビの頭部は原型のまま活かして革鞄に仕立てた設定か、ヘビの頭が持ち主を睨む。
橋本雅也(1978生)の鹿角・鹿骨による彫刻は、その白さ、細密さと繊細さ、儚さが印象的。
山口英紀(1976生)の作品は、膨大な時間をかけて緻密に描いたエンピツ画かと思えばさにあらず、膨大な時間をかけて絹地に緻密に描いた水墨画。
ただ見る人を驚かせるためだけに超絶技巧を贅沢に使用しているかのような作品たち。凄いものを見た。