フェルメールとレンブラント
17世紀オランダ黄金時代の巨匠たち
2016年1月14日~3月31日
森アーツセンターギャラリー
1)フェルメール
初来日、フェルメール21点目の来日作品となるメトロポリタン美術館所蔵の《水差しを持つ女》1662年頃、45.7 × 40.6cm。
女性は、左手に銀鍍金製の水差しを持ちながら、右手を伸ばし枠飾りが施された窓を開ける。朝の光が広がる。
水差しや洗面器には、赤テーブルクロスなど周りのものの色が映っている。
蓋が開いている宝石箱からは、観る角度によっては額縁に隠れて見えにくいかもしれないが、青いリボンのついた真珠がはみ出ている。
2)レンブラント
えっ? レンブラント作品は1点だけ?
《ベローナ》(1633年、127.0 × 97.5cm、メトロポリタン美術館所蔵)のほかには、レンブラント作品がないとは想像していなかった。
ただし、隣には、帰属作品。
《マルハレータ・デ・ヘールの肖像》(1661年、ロンドン・ナショナル・ギャラリー)。
キャプションには、この女性は2点1対の全身肖像画でも描かれたとある。(訂正:私の早とちり。「等身大」との説明であった。)
レンブラントが残した2点1対の全身肖像画は3対しかないと認識していた。それは、2010年の同じ森アーツセンターギャラリー開催のボストン美術館展のキャプションから得た知識。どの作品がその3対にあたるのか手元の画集で確認したのだが、3対とも1630年代半ばの制作。年代が合わない。彼女は若い時に描いてもらったのか。それとも、私の見たて違いなのか。
どうやらこの絵のことらしい。
《Jacob Trip》《Margaretha de Geer》1661年、ロンドン・ナショナル・ギャラリー
う~ん。足元までは描かれていない。全身肖像画の定義次第だねえ。
3)カレル・ファブリティウス
フェルメール1点、レンブラントわずか1点に対し、現存する作品数は10数点と言われているカレル・ファブリティウスが2点も。初来日作品1点を含む。企画者は、どうやらカレル・ファブリティウスで頑張ったらしい。
《アブラハム・デ・ポッテルの肖像》1649年、68.5 × 57.0 cm、アムステルダム国立美術館蔵 は、2008年のフェルメール展以来の来日。画面右上に描かれた、壁にうたれた“錆びた釘”がポイントか。
《帽子と胴よろいをつけた男(自画像)》1654年、78.0 × 68.0 cm 、ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵 は、初来日。
日本にいながらにして、カレル・ファブリティウスをコンプリートできる日が来るかも。
4)その他
ヤン・ファン・ベイレルト《マタイの召命》1625-30年頃
この絵のマタイは、人差し指を胸に立てるのではなく、掌を自然に開いて胸に置くことで、自分を指している。
ホットフリート・スハルケン《さまざまな嗜好》1685-90年頃
山梨県立美術館「夜の画家たち−蝋燭の光とテネブリスム−」展で名前を知った、夜景室内画の画家。
本作も、蝋燭で照らされた夜景室内画。
本展の構成および出品画家・作品数は、次のとおり。
I ハールレム、ユトレヒト、アムステルダム―オランダ黄金時代の幕開け : 4画家4点
II-1 風景画家たち : 9画家10点
II-2 イタリア的風景画家たち : 3画家4点
II-3 建築画家たち : 3画家4点
II-4 海洋画家たち : 4画家4点
II-5 静物画家たち : 5画家5点
II-6 肖像画家たち : 4画家8点
II-7 風俗画家たち : 8画家10点
III レンブラントとレンブラント派 : 8画家10点
IV オランダ黄金時代の終焉 : 1画家1点
17世紀オランダ絵画全般を、以上の49画家・60点で紹介する。
1画家1点(または1対2点)が基本。
また、各主題、概ね横並びの展示数。
京都会場での本展の副題に「世界劇場の女性」とあり、風俗画や女性の肖像画がた多いのかと想像していたがそういうこともなく、「女性」観点から印象づけられることなし。