開館20周年記念展
初期浮世絵展-版の力・筆の力-
2016年1月9日~2月28日
千葉市美術館
専門的な展覧会だ。「日本初の総合的な初期浮世絵の展覧会」。
比較参考として、2014年に東京・名古屋・山口を巡回した「大浮世絵展」の構成・出品数を確認する。総出品数439点。
1章 浮世絵前夜:15点
2章 浮世絵のあけぼの:53点
菱川師宣、杉村治兵衛、鳥居清信、奥村政信など
3章 錦絵の誕生:48点
鈴木春信、勝川春章、磯田湖龍斎など
4章 浮世絵の黄金期:98点
鳥居清長、歌麿、写楽など
5章 浮世絵のさらなる展開:173点
渓斎英泉、北斎、広重、国芳、国貞など
6章 新たなるステージへ:52点
本展は、大浮世絵展の12%、2章にあたる時代に焦点をあてる。その前の近世初期風俗画から、その後の錦絵が誕生する鈴木春信の登場までを取り扱う。
総出品数は、なんと195点。
〈章立て〉
プロローグ:浮世の楽しみ-近世初期風俗画
《桜狩遊楽図屏風》《犬を連れた禿》など。13点。
1:菱川師宣と浮世絵の誕生-江戸自慢の時代
菱川師宣と杉村治兵衛。この章で55点!
2:荒事の躍動と継承-初期鳥居派の活躍
初代鳥居清信など。42点。
3:床の間のヴィーナス-懐月堂派と立美人図
懐月堂安度など。立美人図の肉筆画が多い。17点。
4:浮世絵界のトリックスター-奥村政信の発信力
奥村政信、石川豊信など。31点。
5:紅色のロマンス-紅摺絵から錦絵へ
鳥居清広、そして最後に鈴木春信。37点。
意外だったのは、通期展示が8割程度もあること、つまり、1回の訪問で195点の9割程度を観れること。
最初に菱川師宣、すぐ終わると思っていたら、随分たっぷりと並び、その後も色彩は白黒かせいぜい3色、作者名は馴染みのない、状態も長い年月を感じさせるものが多い、そんな版画が続く。
大浮世絵展では歌麿、写楽、北斎あたりは観ても、その前のこの時代の作品はスルーする、そんな私には、「日本初の総合的な初期浮世絵の展覧会」がどれほど凄いものなのか、正直分からない。
そんな私でも、太い線、色は黒と橙色で描かれた作品、
初代鳥居清倍《二代目市川団十郎の虎退治》1713年
初代鳥居清倍《金太郎と熊》1711-16年頃
には惹かれる。地味な作品を展覧会のメインビジュアルに選んだなあと思っていたが、実物を観て、納得。
出品元が豪華。大英博物館、シカゴ美術館、ホノルル美術館、シアトル美術館や米国・個人蔵、約3分の1の作品が海外からの招集。
初期の浮世絵版画は、そもそも作品あたりの現存数が少ないというが、本展でも、本作以外に現存が確認されていないという貴重な作品も出品。
この「日本初の総合的な初期浮世絵の展覧会」の凄さは分からないながらも、そもそも「初期」という時代は興味深いもの。
この作品も出品されていれば、よかったのだけれど。