続きです。
【カラヴァッジョ・コピー作品】10点 ○1、△1、×8
「果物を剥く少年」(フィレンツェ、ロベルト・ロンギ個人蔵)
「キリストの笞打ち」(ペルージャ、サン・ピエトロ聖堂)
「聖トマスの不信」(フィレンツェ、ウフィツィ美術館)
「キリストの捕縛」(フィレンツェ、個人蔵)
「洗礼者ヨハネ」(ナポリ、国立美術館)
「さいころ遊び」(ヴェネツィア、アカデミア美術館)
「キリストの笞打ち」(マチェラータ、市立絵画館)
「茨の冠」(ウィーン、美術史美術館)
「祈る聖フランチェスコ」(クレモナ、市立美術館)
「エッケ・ホモ」(メッシーナ、州立美術館)
・クレモナ作品は、カラヴァッジョとする見解が優勢です。2001年に東京・岡崎に来ています。
・ウィーン作品は、没後400年回顧展に出品されている作品と思われます。コピーとされた当時と比べると革命的出世となるわけですが、“純正”カラヴァッジョのみを集めた同回顧展の中では真筆性に?を付けられることもある唯一の出品作と言えましょう。
【カラヴァッジェスキ作品】
50人近い画家の128点! 壮観だったでしょう。
個別作品はあげませんが、2001年に東京・岡崎でも紹介された代表的なカラヴァッジェスキ(東京・岡崎の20人中17人が展示)のほか、ルーベンス、ラ・トゥール、ベラスケス、レンブラント、さらにはフェルメールといった美術史上のビッグ・ネームも登場します。
カラヴァッジョの影響がいかに大きかったのか、カラヴァッジョなくしては巨匠たちも今の姿ではありえなかったということを、数多くの作品で示そうとしたのでしょう。
ちなみに出品されたフェルメールは。
【プレ・カラヴァッジェスキ作品】 3人4点。
カラヴァッジョが師事したペテルツァーノのほか、アントニオとヴィンチェンツォのカンピ兄弟。
「カラヴァッジョが単なる革命児だったのではなく、16世紀にロンバルディアで活躍していた写実的な画家たちの伝統の中で育まれた」という「ロンバルディア・セオリー」を提唱したロンギ。この回顧展ではさすがにそこまでは踏み込んでいません。カラヴァッジェスキでお腹いっぱいですものね。
【最後に】
・本回顧展に出品されたカラヴァッジョ(コピーを含む62点)について、以下の基準で分類してみました。
<分類基準>
◎ “純正”カラヴァッジョ。没後400年展覧会への出品クラス。
○ カラヴァッジョと一般的に認められているといってよいが、没後400年展覧会への出品クラスとまでは言い難い。
△ カラヴァッジョであることに少なからず異論。没後400年展覧会出品不可。
× カラヴァッジョではない。あるいはカラヴァッジョとする意見もないわけではないが、一般的には否定的。
<分類結果>(作品ごとには文中に追記)
◎:34点 ○:4点 △:5点 ×:19点
・没後400年回顧展は出品数24点。1951年の回顧展の34点と比べると見劣りすることになります。ただ、開催地がローマ。ワンストップではなくとも、巡回すれば、それを超える数のカラヴァッジョに会えることを考えると、やはり空前の展覧会といえるでしょう。
【蛇足】
・「マグダラのマリアの法悦」。真贋問題の難しい作品。いわゆる「ロンギのプロトタイプ」とされる作品がこの展覧会に出品されているものと今まで思い込んでいました。改めて宮下規久朗氏の書籍を確認すると、「1951年にロンギが写真のみで判断して真作と発表した」とありました。いまだに所在不明とのことですが、いつか世に出ることがあるのでしょうか。