2023年の府中市美術館の展覧会により、「インド細密画」に少し関心を持った私。
「インド細密画」は、東博の総合文化展で常時見れるはず、と探すと、東洋館の地下1階、一番奥の13展示室の隠れた一画にあった。
これまでも来たことはあるだろうが、こうして画と向き合うのは初めて。
府中市美術館の展覧会では、インド細密画は、「ムガル絵画」と「ラージプト絵画」の二つに大別される、と習った。
東博での地図によると、「ムガル絵画」は「ムガル派」と「デカン派」に、「ラージプト絵画」は「ラージャスターン派」と「パハーリー派」に分かれるようだ。個々の作品には、さらにその下の都市名により「●●派」と表示している。
1月2日〜28日までは、「ナーヤカ」と「ナーイカ」と題して、9点の展示。
インドで「ヒーロー」を意味する「ナーヤカ」と「ヒロイン」を意味する「ナーイカ」の間に表現された恋愛をテーマとする、エロティックな細密画。
以下、画像を掲載する。
最初の5点は、「ラージプト絵画」の「ラージャスターン派」にあたると思われる。
《三曲法のポーズのナーイカ》
ジャイプル派、18世紀後半
白いテラスの上で女性が腰、胴、首をそれぞれ曲げて立ち、雄鹿が惹きつけられるように女性に近づいく。
《木に寄りかかって休むナーイカ》
ビーカーネール派、18世紀後半
樹の幹にひじをかけ、うつむくナーイカ。物憂げな様子。
《木に寄りかかるナーイカ》
ビーカーネール派、18世紀
背景の暗い色調から夕暮れのたたずまいが感じられるとのこと。
《ナーイカを膝に乗せて矢をつがえるナーヤカ(ヴィーバーサ・ラーギニー)》
ビーカーネール派、18世紀初
ヴィーバーサ・ラーギニーという音楽を絵画に表現したものとのこと。
矢の先には(画面外)雄鶏。この雄鶏さえ鳴かなければ朝は来ない、そうすればふたりはいつまでも一緒にいられるのに。
《棘を抜く女(ヴリクシカ・ナーイカ)》
ジャイプル派、19世紀後半
侍女の助けを借りながら、左手で細い樹木の枝をつかみ、足裏に刺さった棘を抜いているナーシカ。
インドでは古来、この姿勢をシャーラバンジカーとよび、豊穣を象徴してきた。男女の愛を描いた図の中にもこうした図像が借用されているとのこと。
次の4点は、「ムガル絵画」の「ムガル派」にあたると思われる。
《テラスで愛し合う王子と王女》
ラクナウ派、18世紀前半
王子は花柄のクッションに寄りかかりながら、王女を背後から抱きかかえる。
王女は下から王子の顔を見つめながら、右手に杯、左手に瓶をそれぞれ持っている。
《ナーヤカとセミヌードのナーイカ》
ファキール・ウラー筆(ラクナウ派)、18世紀
ナーヤカはクッションに寄りかかり、ナーイカを後ろから抱きかかえる。
ナーイカはナーヤカの顔を見上げながら、右手をナーヤカの首に回す。
《ナーヤカとセミヌードのナーイカ》
ラクナウ派、18世紀前半
絵の背景や2人が坐るカーペットは平面的に描かれる。
《宮殿のテラスでのパーティーで酔った女性たち》
ラクナウ派、18世紀中頃
素描の段階の絵。宮殿のテラスで催されたパーティーで女性たちがすっかり酔いつぶれてしまった様子が描かれる。
なかなかアクが強い絵画たちである。
1ヶ月単位くらいで展示替えが行われるのだろうか、今後も意識して見に行くつもり。