ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション
2011年6月8日~9月5日
国立新美術館
ワシントン・ナショナル・ギャラリー展(国立新美術館)(その1) (つづき)
第2章 印象派
ドガ「アイロンをかける女性」
ドガといえば、踊り子が有名。ですが、個人的には風俗画が好きです。
本作品は、まさしくつぼ。
画面上部に干された、あるいはテーブル上に置かれた洗濯物も、見ていて楽しい。
もちろん仕事に集中している人物の表情も。
もうひとつ、「障害競馬-落馬した騎手」は、昨年の横浜美術館での「ドガ展」でも登場した作品。
「ドガ展」で一番大きかった作品ですが、作品の大きさに展示室の広さが見合ってなく、立ち位置に困ったうえ、照明の加減で立ち位置をいくら変えても光って見えるので、非常に見にくい!という印象しか残っていません。
今回、天井高もあり、広くて、照明の問題のない展示室で、きちんと鑑賞する機会を得ることができたのは、極めて幸運な経験です。
モネ「揺りかご、カミーユと画家の息子ジャン」
モネ6作品のなかでは、この作品を選びました。ジャンの顔が可愛い。
これが当時当たり前であった「睦まじい」母子の描き方の一典型ということでしょうね。
モネ夫人と息子をモデルとする作品は、本作以外にも。
モネ「日傘の女性、モネ夫人と息子」(今回の目玉作品の一つ)。
さらに、ルノワール「モネ夫人とその息子」があります。
実に豪華な布陣です。
ルノワール作品は必見です。二人の表情。特に夫人。
どうしてもとがって見えてしまうあご、歯を見せる口元。なんか異様。モネはこんな風には描かない。
他には、
カイユボット「スキフ(一人乗りカヌー)」
エヴァ・ゴンザレス「家庭教師と子供」(母子ではありませんが、これも愛情が通わない二人?)
ルノワール「ポン・ヌフ、パリ」(橋を行きかう車、馬車、そして人々に惹かれます)や「踊り子」
など。もっとあげてもいいけど、きりがないので。
第4章 ポスト印象派以降
セザンヌ「『レヴェヌマン』紙を読む画家の父」
セザンヌ6点の中では、初期の作品を選びます。
銀行家であった厳格な父を描いた肖像画。かなり大きな作品(198.5cm×119.3cm)。
手にする新聞は、急進的論調の『レヴェヌマン』紙。実際には父親は同紙を嫌悪していたとのこと。
セザンヌ自身の静物画作品も背景に見られます。
重々しい褐色の色調。父親は相当厳格だったのだろうなと思わせます。
息子が画家になることを最も反対する一方で、生活の援助を行っていた父親との複雑な関係が伺える興味深い作品です。
これまた、長居してしまいます。
ゴーギャン「ブルターニュの踊る少女たち、ポン=タヴェン」
ゴーギャン作品は1点だけ。ちょっと残念。
ワシントン・ナショナル・ギャラリーでは、6月5日までゴーギャン展をやっていたので、その影響かなあ。
ゴーギャン展(Maker of Myth)では、HPを見ると、私の好みである神秘的な題材の作品も多数出品されていたようです。
そのような展覧会は日本では望めないですよね。
ゴッホ「自画像」
ゴッホ作品は3点。今回の目玉の一つが、1889年作のサン・レミでの本作品。
手にパレット。絵具も何種類か置かれている。
発作からの回復直後とのことで、血色が良くないゴッホです。
他には、
セザンヌ、ゴッホの全作品。スーラも忘れてはいけません。全て見ごたえあり。
第3章 紙の上の印象派
ほとんど見ていない(ドガのパステル画とロートレック作品のみ)ので、記載は省略です。
最後に
前回の1999年のワシントン・ナショナル・ギャラリー展は、東京会場(東京都美術館)では41.2万人の入場者がありました。
どんな作品が来ていたかは記憶にありませんが、フェルメール他オールドマスター作品8点、印象派以前、印象派、後期印象派と新印象派、世紀末から20世紀へ、の構成で、全85点だったようです。
今回は、印象派に絞っての展覧会。「常設コレクション作品」(※)なるものも9点。
昨今の展覧会人気を考えると、前回を上回る入場者数になることになりそうです。
※常設コレクション作品について(展覧会HPより)
ワシントン・ナショナル・ギャラリーには、「常設コレクション作品」と呼ばれる作品群がある。
「常設コレクション作品」は、その作品価値をもとに、寄贈者または理事会の意向で決められ、ある決まった点数以上、一度に館を離れてはならないという不文律がある。
2010年11月現在、「常設コレクション作品」に指定されているのは2,334点(うち66点がフランス絵画)。
本展には、9点の「常設コレクション作品」が出展されている。これはひとつの展覧会に出される点数としてはワシントン・ナショナル・ギャラリー史上最多。
館長をもってして「70年におよぶワシントン・ナショナル・ギャラリーの歴史上かつてない、そしてこれからもないであろう」と言わしめる、空前の質と規模の展覧会といえる。
※本展に含まれる、常設コレクション作品
マネ《鉄道》
バジール《若い女性と牡丹》
モネ 《揺りかご、カミーユと画家の息子ジャン》
モネ 《日傘の女性、モネ夫人と息子》
ルノワール 《踊り子》
カサット 《青いひじ掛け椅子の少女》
カサット 《麦わら帽子の子ども》
セザンヌ 《赤いチョッキの少年》
スーラ 《オンフルールの灯台》