2018年10月26日付朝日新聞夕刊にて知る。
行方不明となっているゴッホ唯一の全身自画像《タラスコンへの道を行く画家》を、大塚国際美術館(徳島県鳴門市)が陶板で原寸大で再現し、11月3日から一般公開、常設展示するとのこと。
ゴッホ
《タラスコンへの道を行く画家》
1888年7月、アルルにて制作
48×41.8cm
カイザー・フリードリッヒ美術館、マデスブルグ(現マデスブルグ文化歴史博物館、ドイツ)旧蔵
1945年消失
1888年、パリからアルルに移り住んだゴッホは、小高い丘の上に立つモンマジュール修道院とその周囲の風景に魅了され「この地を50回以上訪れた」と弟テオへの手紙に記している。
この作品に描かれた自画像は、タラスコン街道を通って、モンマジュール修道院へとスケッチに出かける途中の姿と考えられている。
右手に簡易イーゼル、左手にスケッチブックを持ち、南仏の強い日差しを遮るために麦わら帽子をかぶっていて、地面にできた濃い影からも、そのことをうかがい知ることができる。
1912年、マデスブルグ(ドイツ)のカイザー・フリードリッヒ美術館がベルリンの画商から購入する。
1943年、連合軍の爆撃を逃れるため、美術館は所蔵作品338点をマグデブルク市内から約30km南の町、シュタースフルト郊外の岩塩坑に避難させる。
運ばれた絵画は、一番大きなエレベーターを備えていたシャフト(縦穴貫通抗)より460m下まで運ばれ、地中深くに隠される。作品が埋められたわずか30m上は、ナチスドイツ軍のジェットエンジン工場が建てられアメリカ軍の最優先征服拠点となっていた。
1945年、アメリカ軍によってこの地は解放される。いくつかの作品は発見されたが、本作品は行方不明のままである。
同年4月に2度の火災に見舞われており、保管中の絵画は燃えたともされている一方、同じ場所に保管されていたマルティン・ルターの手稿がアメリカで発見された例もあることから、盗まれた可能性もあるとされている。
シュタースフルト岩塩坑(ドイツ、ザクセン=アンハルト州)については、現在では地下を掘り過ぎたことによる地盤沈下が進み、絵画が運び込まれたシャフトもコンクリートで埋め立てられていて、これ以上の地下捜索は事実上不可能とされている。
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1957年、フランシス・ベーコン(1909-1992)は、《タラスコンへの道を行く画家》をもとに、6点の連作を制作している。作品における色彩の復活を試みたようである。
うち2点、ハーシュホーン美術館(米ワシントン)所蔵の《ファン・ゴッホの肖像のための習作5》と、アーツ・カウンシル・コレクション(英)所蔵の《ファン・ゴッホの肖像のための習作6》は、2013年の東京国立近代美術館開催「フランシス・ベーコン展」に出品された。
なお、1はSainsbury Centre for Visual Arts(英)、3は5と同じくハーシュホーン美術館、4はテート(ロンドン)が所蔵。2はよく分からないが個人蔵であるようだ。