東京でカラヴァッジョ 日記

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ゴッホ《靴》- 【その5】「ゴッホと静物画」(SOMPO美術館)

2023年11月24日 | 展覧会(西洋美術)
ゴッホと静物画 - 伝統から革新へ -
2023年10月17日〜2024年1月21日
SOMPO美術館
 
 
 その迫力に魅入る。
 
フィンセント・ファン・ゴッホ
《靴》
1886年9〜11月、37.5×45.5cm
ファン・ゴッホ美術館
 
 
 ゴッホは、靴のみを描いた静物画を、少なくとも7点制作しているという。
 パリ時代に5点、アルル時代に1点、サン=レミ時代に1点である。
 本作は、パリ時代の制作で、5点のなかでは一番最初の制作のようである。
 
 
 茶褐色の背景に厚塗り。
 この迫力は、どこから来るのだろう。
 この靴は、ゴッホの自画像と思いたくなる。
 
 
 本作のモデルとなった靴は、コルモンのアトリエでゴッホとともに学んだフランソワ・ゴージの証言によると、次のようである。
 
・ゴッホが蚤の市で買った。
 履き古した古靴だが、綺麗に磨かれ、汚れもなかった。
・これが気に入らなかったゴッホは、ある雨の日の午後、その古靴を履いてパリを歩き回る。
 そして、泥がこびりついて趣きのあるものになった靴を忠実に写し描いた。
 
 
 本作は、ドイツの哲学者ハイデガーが芸術作品に関する論文に取り上げたことでも知られているようだ。
 哲学者は、1930年のアムステルダムでのゴッホ展で本作を見て感銘を受けたらしい。
 その論文は、平凡社ライブラリーの『芸術作品の根源』(表紙には本作品が掲載)で読むことができる。私は未確認だが、「農夫の靴」とみなし、論述を展開させているらしい。
 
 
 描かれた靴は、「一足」の靴なのか。
 
 大きさに違いがあるうえに、どちらも左足の形をしているように見える、とも言われる。
 
 そこから、この靴は、フィンセントと、弟テオの靴なのだ、とする説もある。
 
 さらに、同時期に描かれた次の作品。
 
【参考(展示作品ではない)】
フィンセント・ファン・ゴッホ
《三足の靴》
1886〜87年冬、49.8×72.5cm
フォッグ美術館(ハーバード大学附属)
 
 フィンセント、弟テオ、そしてテオの親友でテオの妻となるヨハンナの兄であり、当時テオと共同で画廊経営を計画していたアンドリース・ボンゲルの靴だ、とする説もある。
 
 新関公子氏は、著書『ゴッホ 契約の兄弟』にて、一人の女性に対する彼らの罪の告白が含まれているのだ、との説を展開させている。
 
 
 他の5作品は、次のとおり。
 
【参考(展示作品ではない)】
 
《一足の靴》
1886-87年、37.5×46cm
個人蔵
 
《一足の靴》
1887年、32.7×41.3cm
ボルチモア美術館
 
《靴》
1887年1〜2月、32.7×40.8cm
ファン・ゴッホ美術館
 
《靴》
1888年、45.7×55.2cm
メトロポリタン美術館
 
《一足の革靴》
1889年秋、32.2×.40.5cm
ファン・ゴッホ美術館
 
 個人蔵は別として、茶褐色の背景に厚塗り系の上掲2作品とは、異なる作品である。
 
 
 ファン・ゴッホ美術館サイトによると、《靴》は、別の絵の上に描かれているという。テオのアパートからの眺めを描いた絵だとのこと。
 
 また、同サイトによると、《靴》は、過去3度来日しているようだ。
 
・1996年の安田火災「ゴッホとその時代」
・2005年の東京・大阪・名古屋「ゴッホ展」
・2016-17年の東京・名古屋「ゴッホとゴーギャン展」
 
 いずれも行ったのだが、《靴》の印象は残っておらず、今回が初反応である。


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