東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

藤田嗣治展(府中市美術館)

2016年10月10日 | 展覧会(日本美術)

生誕130年記念 藤田嗣治展
-東と西を結ぶ絵画-
2016年10月1日~12月11日
府中市美術館

 

 

   日曜日は府中に行こう、と調べると、

 

   10月9日(日)は開館記念無料観覧日です。当日は混雑が予想されます。混雑時には入場制限を行いますので、あらかじめご了承ください。

 

   藤田展が無料で見れる、ラッキー! なのか。
   混雑のため不完全鑑賞、ケチらず別の日にすればよかったと後悔、になるのか。
   訪問是非を悩みつつ、開館時刻の10時数分過ぎ、美術館に到着する。

 

   人々が続々と館内に入っていく。今までそんな光景を見た記憶がない。

 

   私も1階ロビーの入場待ち行列最後尾につく。
   入口すぐ右手では、展覧会図録のチャリティー販売。価格設定は、300・500・1000円の3種。府中市美に限らず、各地の美術館での図録が並ぶ。
   別のコーナーでは過去の展覧会ポスターの無料配布。枚数制限なし。

 

   開館直後はどうか分からないが、私が列についてからは、5分前後毎に16人ずつ、入場させている。
    さっさと入れればいいのに、展示室内はそんなに混んでいるのか。と思いつつ大人しく35分間待って、ようやくエスカレーターに乗る。

 

   入室して知る。滞留、渋滞なくスムーズに鑑賞できるよう入場制限していたことを。

 

   ほぼストレスなしで、展示順に鑑賞することができる。絶妙だ。プロの技だ。無料観覧日だからこそ出来る技かもしれない。加えて、来館者も、無料だから、市の「市民文化の日」だから、有名な藤田だから、と思い入れ少なく、スイスイ進むという面もあるのかも。

 

   さて、藤田展の感想。

   よかったです。

 

   2006年の東京国立近代美での生誕120年大回顧展「パリを魅了した異邦人」より満足度大。
   国立美術館の展覧会である2006年のほうが質量ともに勝るのだろうが、混雑も凄まじかった。今回は無料観覧日でありながら、じっくり観ることができた。

 

   内容は、というと。

 

   戦争記録画3点に圧倒される。

 

   出品作品3点は、
《アッツ島玉砕》1943年
《ソロモン海域に於ける米兵の末路》1943年
《サイパン島同胞臣節を全うす》1945年

 

   順路に従って進み、1943年の57歳の《自画像》に達したところで、右先を見ると、戦争記録画3点が並んでいる。その並ぶ様が、一瞬、三連祭壇画のように見える。左斜めほぼ真横からという急角度で見たことによる、アナモルフォーシス効果なのか。三連祭壇画の印象はすぐに打ち消される。正面から見ると、それぞれのサイズが違うし。

 

   中央の《ソロモン海域に於ける米兵の末路》はあまり見たことがないが、左翼の《アッツ島玉砕》と右翼の《サイパン島同胞臣節を全うす》は、何回も観ている。

 

   何回も観ているはずが、えらく新鮮。まるで初めて観たかのような感じ。熱心に画面を眺めてしまう。照明の関係か。東近美と比べ高い位置に展示しているためか。画面の見え方が違う。人物がよりクリアに見えるのである。群像劇の力作であることは分かる。

 

   ここに至るまで、第1章の大学時代から渡仏後までの試行錯誤の初期作品(1909-18)、第2章「パリ画壇の寵児」の“乳白色の肌”作品(1919-29)、第3章のパリを出て南米を旅し、日本に帰国して国内を旅した時代の作品(1930-37)まで、いいなと眺めた作品が多々あった。が、第4章(1938-48)の戦争記録画3点により、それらの印象はほぼ消し去られた。
   また、ここより先の第5・6章の日本脱出、フランス帰化の晩年の作品(1949-68)もほぼ素通り。ボリュームも意外となかったけれど。

 

   かろうじて印象に残る作品。

《スーチンのアトリエ》
1913年
ランス美術館

   画家が最後まで手元に置いていた作品だという。パリ生活を始めたばかり、モンパルナスのアトリエ長屋に住んでいた時代の作品。建物外側。

 

《自画像》
1943年
豊田市美術館

   藤田らしからぬ、しかし、戦中という時代には似つかわしい暗い色彩の、57歳の小サイズの自画像。

 


   退館時の入室待ち行列は、私の時の半分程度になっていた。開館直後が一番混むものらしい。

 

   110点強の出品。ランス美術館のほかは、国内からの出品のようだ。紙の作品は前後期入替あり。府中市美の通常企画展より会場規模が拡大(常設展示は牛島記念館のみ)。

 



コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。