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ヴィルヘルム・ハマスホイ《室内、床に映る陽光》、ストランゲーゼ30番地 -「テート美術館展 光」(国立新美術館)

2023年07月28日 | 展覧会(西洋美術)
テート美術館展 光 
ターナー、印象派から現代へ
2023年7月12日〜10月2日
国立新美術館
 
 ヴィルヘルム・ハマスホイ(1864-1916)。
 
 デンマーク・コペンハーゲンの画家。
 「ハマスホイ色」としかいいようのないモノトーンを基調とした色調の、静謐な室内画で知られている。
 
 日本でも、2008年に国立西洋美術館にてハマスホイ作品86点も出品された大回顧展「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」が開催。また、2020年に東京都美術館・山口県立美術館にて「ハマスホイとデンマーク絵画」が開催されている(コロナ禍で会期短縮)。
 
 
 本展には、テート美術館が所蔵するハマスホイ作品が2点出品される。
 うち1点。
 
ヴィルヘルム・ハマスホイ
《室内、床に映る陽光》
1906年、51.8×44cm
 
 本作品は、閉じられた扉と中庭に面した窓を主題とする。
 柔らかな外光が室内を照らし、窓の外には中庭の対面の部屋の窓が見える。
 誰もいない室内を描いているように見えるが、本来は、画面左端にその一部が見えるテーブルのところに妻・イーダが描かれていたという。
 最初の所有者が、誰もいない室内画の方が好みであったようで、カンヴァスの左側を木枠の裏に巻き込み、イーダの姿を消してしまったらしい。作者が意図していない改変である。
 
 
 舞台は、1898年から画家夫妻が居住したコペンハーゲンのストランゲーゼ30番地の住居である。
 
〈ストランゲーゼ30番地の住居の平面図〉
(2008年の国立西洋美術館「ヴィルヘルム・ハンマースホイ 静かなる詩情」図録より)
 
 上記の平面図の「6」の部屋が舞台である。
 
 1909年にその建物が所有者によって売却されたため立ち退かざるを得なくなるまでの、およそ11年間、画家は繰り返し繰り返し、ストランゲーゼ30番地の住居の室内を描く。
 
 「6」の部屋においても、閉じられた扉と中庭に面した窓を主題として、室内画を多数描いているようである。
 
 
 最も有名であるらしい作品(本展非出品)
 
ヴィルヘルム・ハマスホイ
《陽光、あるいは陽光に舞う塵》
1900年、70×59cm
オードロブゴー美術館、コペンハーゲン
 
 
 2008年の国立西洋美術館の回顧展には、「6」の部屋の扉と窓を描いた室内画が7点も出品された。
 人のいる室内が5点、誰もいない室内が2点である。
 以下、4選(本展非出品)。
 
ヴィルヘルム・ハマスホイ
《室内の女性》
1909年、57.1×62.2cm
ボストン美術館
 
ヴィルヘルム・ハマスホイ
《イーダのいる室内、ストランゲーゼ30番地》
1901年、54.9×53cm
デトロイト美術館
 
ヴィルヘルム・ハマスホイ
《コイン・コレクター》
1904年、89×69.5cm
オスロ国立美術館
 
ヴィルヘルム・ハマスホイ
《陽光習作》
1906年、54.5×46.5cm
デーヴィス・コレクション、コペンハーゲン
 最後掲載の作品は、2020年の東京都美術館「ハマスホイとデンマーク絵画」展にも出品された。
 
 
 
 2008年の回顧展でハマスホイの名(当時はハンマースホイとの表記であった)を初めて知る。 
 1回だけ行くが、特に感銘を受けたという記憶はない。というか、人気があったらしく、混雑+展示室内の鑑賞待ち行列で途中で気力を失ったというところ。
 ただ、独特のハマスホイ色に染められた展示空間、室内画でも同じ部屋を少し部分部分を変えながら描いた絵が何点も何点も並んでいる様、日本における西洋美術の画家の回顧展としては異例にディープという印象が強く残る。 
 その後、2020年の回顧展を機にようやくハマスホイの魅力を認識したというところ。
 
 
 日本の美術館では、国立西洋美術館およびポーラ美術館が各1点ハマスホイ作品を所蔵している。
 
 国立西洋美術館の所蔵作品《ピアノを弾く妻イーダのいる室内》は1910年の制作なので、ストランゲーゼ30番地を転居後2番目のブレスゲーゼ25番地の住居が舞台である。
 
 ポーラ美術館の所蔵作品《陽光の中で読書する女性、ストランゲーゼ30番地》は、ストランゲーゼ30番地の住居の「6」の部屋を舞台としている。
 どうやら2008年の回顧展にて、個人蔵として出品された作品であるようだ(本展非出品)。
 
 
 
 さて、テート美術館展のもう1点のハマスホイ出品作。
 
ヴィルヘルム・ハマスホイ
《室内》
1899年、64.5×58.1cm
 こちらは、平面図の「1」の食堂が舞台となっている。
 本作品は2008年の回顧展でも来日している。


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