糸のみほとけ
国宝綴織當麻曼荼羅と繍仏
2018年7月14日〜8月26日
奈良国立博物館
約5ヶ月ぶりの関西プチ美術旅行。台風12号の影響が懸念された週末に敢行する(結果として影響を全く受けることなく終了)。
今回の行き先は、奈良国立博物館の特別展である。
今まで「糸」の仏の存在すら意識していなかった私だが、「糸」の仏の国宝3点が一堂に会する空前の企画、なんて聞いてしまうと、気になって仕方がない。
本展では、飛鳥時代(7世紀)から江戸時代(18世紀)までの日本、および同時代の中国における、「糸」の仏がずらっと並ぶ。
国宝3点および英国から出品された同時代の中国の品1点の計4点を中心に鑑賞する。
国宝《天寿国繡帳》
(てんじゅこくしゅうちょう)
飛鳥時代、7世紀
奈良・中宮寺蔵
入室すぐ真正面に登場。
随分以前に中宮寺で国宝《木造菩薩半跏像》にお会いした際、当寺がもう一点の国宝を所蔵し、その国宝は染織で、公開機会は稀であることを知って以降、多少は気になっていた品。
飛鳥時代の原本の刺繍片と鎌倉時代の模本の刺繍片を一面のなかに貼交の状態、との説明。なんとも大胆なことをしたものだ。
面白いのは、飛鳥時代の原本のほうの糸の残りは良く、発色も良いのに対して、鎌倉時代の模本の色糸は褪色し、糸の欠失も著しいとの説明。普通に考えると、良好な部分が鎌倉時代、劣化した部分が飛鳥時代だが、逆なのだ。技術や材質や手間暇など、飛鳥時代のほうが優れていた、ということか。
↑ 飛鳥時代の紫色の背景が残る。
国宝《綴織當麻曼荼羅》
(つづれおりたいままんだら)
中国・唐または奈良時代、8世紀
奈良・當麻寺蔵
2014〜17年度の修理後初の公開。修理作業前の2013年に奈良博「當麻寺展」で公開されたのが30年ぶりの公開であったらしい。
約4メートル四方の超大型サイズ。傷みが激しくて、何が描かれているのか判別できない。一所懸命眺めていると、真ん中から下のほうにはうっすら見えてくる部分が少しはあるが、真ん中から上のほうは全く見えない。これが糸によるものだなんて全く判別できない。
国宝《刺繡釈迦如来説法図》
(ししゅうしゃかにょらいせっぽうず)
奈良時代または中国・唐、8世紀
奈良国立博物館蔵
縦207×横157cmの大画面。京都市山科区の勧修寺伝来で、第二次世界大戦後に国の所蔵となったらしい。
奈良時代には繍仏の大幅が作られて堂宇の本尊としてもまつられていたが、そのほとんどが失われた現在、本品は貴重な遺品とされている。本品も2012-15年度に全面的な修理を行ったばかりであるとのこと。
制作地が日本なのか中国なのか結論が出ていないとのこと。そういうものなのですね。
《刺繡霊鷲山釈迦如来説法図》
中国・唐、8世紀
大英博物館
本展で唯一海外からの出品。
20世紀初頭に中国・敦煌の莫高窟で発見され、探検家スタイン(1862-1943)が英国に持ち帰る。この時代の中国の繍仏としては、大きさ、技法、保存状態とも現存最良のものであるらしい。そのような作品が英国にある、というのは歴史を感じる。
刺繡や綴織など「糸」で表された仏の像、全138品。
私は、これらの世界を味わえるほどの鑑賞力はないことを認識した。