東京でカラヴァッジョ 日記

美術館訪問や書籍など

ヴァチカン教皇庁図書館展II(印刷博物館)

2015年05月09日 | 展覧会(その他)

ヴァチカン教皇庁図書館展II
書物がひらくルネサンス
2015年4月25日~7月12日
印刷博物館


 15世紀後半から16世紀に出版された書物が60点あまり。

 ヴァチカンからは20点ほどで、他は、印刷博物館自身や国内の大学図書館などからの出品。

 活版印刷技術の発明以降、出版業が発展していく時代。
 国立新美術館「ルーヴル美術館展」出品中のマセイス≪両替商とその妻≫で両替商の妻の手元にある祈祷書のような豪奢絢爛な書物は見当たらない。オープン頁が文字のみの頁だったりする。その稀覯性は私にはわからない。
 それでも、岩波文庫や高価な専門書になっている、あるいは、その時代の歴史を語る書籍ではその作者や書名が必ず言及される、そのような書籍の500年前の出版物の実物がずらっと展示される様は、実に壮観。

 以下、ヴァチカンからの出品で、印象に残ったものを記載する。


第1部 祈りと救い
 キリスト教と書物、ルネサンスの死生観とキリスト教信仰

No.02≪聖書(イタリア語)≫
 ヴェネツィア、1490年
 最初の挿絵入りイタリア語聖書。387図。彩色は下部の紋章のみ。


No.09≪トリエント公会議決定集≫
 ローマ、1564年
 オープン頁はタイトルページ。「いるかと錨」のマーク。
 この後に出てくる展示により、このマークは、商業出版の父と言われるアルド・マヌーツィオが使用したもので、「ゆっくりと急げ」という意味を表わすことを知る。もとは古代ローマ時代からあるマークを採用したもの。そのマークが刻まれた紀元後80年の古代ローマの硬貨も展示。

No.14a≪人類贖罪の鑑(ラテン語&ドイツ語)≫
 アウグスブルク、1473年以前
 図は、悪魔を懲らしめるイエス・キリストと天使。


No.15≪アントニオ・ベッティーニ|神の聖なる山≫
 フィレンツェ、1491年
 図は、天国への梯子かな。左隅に小さく横向きの化物?が持つ「CECITA」(TAは逆向き)

国内からは、アウグスティヌス『神の国』、トマス・アクィナス『神学大全』、デューラー『黙示録』など。


第2部 古代の叡智
 古代ギリシャ・ローマの古典。

No.24≪ユスティニアヌス帝|法学概要≫
 マインツ、1468年
 注釈が本文を取り巻くようにレイアウトされる。注釈の面積の方がはるかに大きい。この手の本の宿命か。


No.28≪バルトロメオ・マルリアーニ|都市ローマの地誌学≫
 ローマ、1544年
 ローマのガイドブック。
 オープン頁には、ラオコーンの挿絵。1506年の発掘当時、右腕は失われていたが、1530年代の修復でテラコッタ製の腕が取り付けられる、その修復後の姿。


国内からは、ヘロドトス、プリニウス、リウィウス、ウェルギリウス、キケロ、ユークリッドなど


第3部 近代の扉を開く
 ユマニスト自らの著作。

No.30d≪ボッティチェリ|ダンテ『神曲』(複製版(オフセット))≫
 逆円錐状の地獄の絵。

No.45≪ジョフロア・トリー|花咲く野≫
 1529年、パリ
 ローマン体の書体論。人体に内在する比率と書体との関連性を詳述する。
 オープン頁は、O、A、H、Kの4文字。見よ、ローマン体はいかに人体のバランスに合致したものか、なんと神聖なものか。

国内からは、トマス・モア、エラスムス、ルター訳ドイツ語聖書など


第4部 ヴァチカン貴重庫でみつけた日本・東アジア
 大航海時代、日本への布教

No.53≪天正少年使節からヴェネツィア共和国政府への感謝状≫
 ヴェネツィア、1585年7月2日
 ローマ滞在後の帰国途上、使節一行はヴェネツィアに寄り歓待される。
 感謝状には、四人の使節の花押(サイン)。


No.54≪どちりいな・きりしたん(キリシタン版)≫
 島原または天草、1591年
 残存数が極めて少なく、世界でもっとも入手困難な書物の一つとされる。


国内からは、マルコ・ポーロ、コロンブス、イエズス会士からの報告書など。


I は、13年前の2002年に「書物の誕生-写本から印刷へ」展と題して開催されている。



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