日本・フィンランド外交関係樹立100周年記念
モダン・ウーマン―フィンランド美術を彩った女性芸術家たち
2019年6月18日~9月23日
国立西洋美術館 新館展示室
いつもは常設展示室としてモネを中心とする印象派作品が展示されている新館2階展示室。
「松方コレクション展」開催中は、フィンランドの女性芸術家7人の作品を紹介する企画展が行われる。常設展料金で観覧できるのでお得感あり。
写真撮影も可(私の訪問日時点)。無音カメラアプリで撮影した画像を何点か掲載させてもらう。
1:マリア・ヴィーク(1853〜1928)
《教会にて》
1884年、国立アテネウム美術館
ブルターニュ地方のポン=タヴェン滞在時に制作。地方の伝統的衣装(ゴーガンなど当時の画家が好んで描いている)を着て、教会で祈りを捧げる少女。
《ボートをこぐ女性》
1892年頃、国立アテネウム美術館
モデルは画家の姉とみられている。外光派的な作品。
2:ヘレン・シャルフベック(1862〜1946)
《祖母》
1907年、国立アテネウム美術館
《木こりI》
1910-11年、国立アテネウム美術館
本作は、マネにとっての《オランピア》に匹敵する一つの「宣言」である、と画家は語っている。
《占い師(黄色いドレスの女性)》
1926年、国立アテネウム美術館
黄色いドレスと赤い口紅が印象的なモダンな装いの女性。
3:エレン・テスレフ(1864〜1954)
《トスカーナの風景》
1908年、国立アテネウム美術館
トスカーナのオリーヴ畑。カンディンスキーの表現主義絵画からの影響。
《装飾的風景》
1910年、国立アテネウム美術館
木の下にたたずむ女性の姿の小ささ。
《自画像》
1916年、国立アテネウム美術館
4:シーグリッド・ショーマン(1877〜1979)
《自画像》
年記なし、国立アテネウム美術館
5:エルガ・セーセマン(1922〜2007)
《自画像》
1946年、国立アテネウム美術館
《カフェにて》
1945年、国立アテネウム美術館
女性がカフェで佇み、カクテルと煙草を楽しむ。男性を伴わず一人で外出する、1920年代以降の都市に新たに登場した近代的な女性の姿。
《通り》
1945年、国立アテネウム美術館
空虚な都市の情景。重厚で人気のない建物。上空を通う電話線。一人の人物が光の方向へ歩を進める。第二次世界大戦終結の年の制作。
6:シーグリッド・アフ・フォルセルス(1860〜1935)
7:ヒルダ・フルディーン(1877〜1958)
女性彫刻家。シーグリッドは1883年から、ヒルダは1903年から、約3年間ロダンの弟子であった。
彫刻作品が各1点出品されるが、ガラス映り込みが激しく、画像掲載は断念。
第一会場は、作家別の展示。
第二会場の版画素描展示室では、版画作品やスケッチなどを中心としたテーマ展示。
85点の出品。
2015年の東京芸大美の回顧展で名を知ったヘレン・シャルフベックや、彼女と同時代(一人は明らかに後の世代)に活躍したフィンランド女性芸術家たちの作品を楽しむ。個人的には、エルガ・セーセマンの作品をもう少し観たいな。
【国立西洋美術館サイトより】
19世紀後半から20世紀初頭のフィンランドでは、ロシアからの独立運動、そして1917年に誕生する新しい国家の形成と歩調を合わせて、社会における女性の立場や役割に大変革が起こりました。美術界においても、19世紀半ばに設立されたフィンランドで最初の美術学校は、当時のヨーロッパではめずらしく、創立当初から男女平等の美術教育を奨励しました。この時代の女性たちは、奨学金や留学のチャンスを掴み、国際的な環境で研鑽に励みながら、芸術家としてのキャリアを切り開くことができたのです。
日本とフィンランドの外交関係樹立100周年を記念した本展は、独立前後のフィンランドを生き、同国の近代美術に革新をもたらした女性芸術家たちに焦点を当てる、日本で初めての試みです。この展覧会は、フィンランド国立アテネウム美術館の企画によって欧米3都市で開催された国際巡回展をベースに、日本オリジナルの内容に再構成したものです。同美術館のコレクションから、近年世界的にも注目を集めるヘレン・シャルフベック(1862-1946)や、パリでロダンに学び、彼の代表作《カレーの市民》の助手も務めた彫刻家シーグリッド・アフ・フォルセルス(1860-1935)ら7人の女性芸術家を一堂に紹介します。絵画、彫刻、素描、版画など約90点の作品を通して、生涯にわたり独自の芸術表現を追い求めた、彼女たちの多彩な活動と功績を是非ご覧ください。