表現への情熱
カンディンスキー、ルオーと色の冒険者たち
2017年10月17日〜12月20日
パナソニック汐留ミュージアム
ルオー財団協力による個人蔵作品約40点を中心としたルオー作品。
宮城県美術館を中心とする国内美術館所蔵のカンディンスキー、クレー、その他ドイツ表現主義の画家の作品。
この2つが組み合わさって構成されている本展。
私的に興味深く見たのは、出品数は限定的だが、国内美術館が所蔵する、カンディンスキーとクレー以外のドイツ表現主義の画家の作品。
以下、特に気になったカンディンスキー・クレー以外のドイツ表現主義の画家の作品について記載する。
と言いつつ、まずは本展のメインビジュアルであるカンディンスキー作品に触れないわけにはいかない。
カンディンスキー
《商人たちの到達》
1905年、宮城県美術館
鮮やかな色彩の本作は、画家の初期作品。「抽象画に至る以前の代表作で、故郷ロシアへの憧憬を理想郷的に描いた」「線描と点描の計算された配置で『ロシア固有の音楽的要素』を表現した」作品。想像以上の大きなサイズ(92.5×135.0cm)。東京での展示は30年ぶりという。
次に、その他のドイツ表現主義の画家の3点。
エーリッヒ・ヘッケル
《木彫りのある静物》
1913年、広島県立美術館
刃で切ったかのような人物(ではなくて木彫りの人形)の線。きつい色彩。なかなかヘッケル作品を見る機会はなく、記憶の範囲では近年のデトロイト美術館展に1点出品されたくらいだが、国内所蔵作品があることは認識していなかった。
マックス・ペヒシュタイン
《森で》
1913年、高知県立美術館
本展には、宮城県美術館所蔵の版画集「われらの父」や油彩画《パイプ煙草を吸う漁師》、姫路市立美術館所蔵の油彩画《帆船》も出品されているが、お気に入りは本作。「自然」のなかの人間。
カール・シュミット=ロットルフ
《女性頭部(『新ヨーロッパ版画集』第5集)》
1915年、宮城県美術館
この画家の作品は、小さなサイズの木版画1点の出品に限られるのだが、やはり刃で鋭く切ったような線は魅力的。
上記3人はブリュッケに属する画家。ブリュッケ派の画家は好み。キルヒナーやオットー・ミュラーの作品も見たい。ブリュッケ派の展覧会を是非どこかで開催してほしい。
ブラウエ・ライター(青騎士)の画家も好み。
本展では、カンディンスキー、クレーのほか、個別作品には触れないが、アルフレート・クビーン、アウグスト・マッケ、ハインリヒ・カンペンドンク、ガブリエーレ・ミュンター作品が出品されている。フランツ・マルク作品も見たいが、本展にはなし。フランツ・マルクの展覧会をどこかで開催してくれないかなあ。
結論。
・ブリュッケ派の展覧会を開催してほしい(1991年に目黒区美術館で開催されたことがある)。
・フランツ・マルクの回顧展を開催してほしい(難しいだろうことは認識している)。
・宮城県美術館のカンディンスキー・クレー作品コレクションは厚い(本展と同時期開催のBunkamuraのオットー・ネーベル展にも出品しているほど)。