奇才 - 江戸絵画の冒険者たち
変更前:2020年4月25日〜6月21日
変更後:2020年6月2日〜6月21日
江戸東京博物館
6/2から開幕した「奇才」展。
東京(江戸東京博物館)、山口(山口県立美術館)、大阪(あべのハルカス美術館)を巡回する。
3会場あわせて、35人の絵師の229点を展示する予定としていた。
うち、東京では、35人の絵師の155点を展示予定であったらしい。
会期短縮により、33人の絵師の86点の展示(一部展示替えあり)に留まる。
ただし、もともと毎週のように展示替えを予定していたようだから、一度の訪問で見ることのできた展示点数は変わらないものと思われる。
「京」「大阪」「江戸」「諸国」と分けて、それぞれ絵師ごとに作品が並ぶ。
展示がなくなった(パネル展示のみとなった)絵師は、「諸国」の浦上玉堂と神田等謙の二人である。
お気に入り3選。
1)絵金の芝居絵4点。
《伊達競阿国戯場 累》
《東山桜荘子 佐倉宗吾子別れ》
《花衣いろは縁起 鷲の段》
《播州皿屋敷 鉄山下屋敷》
絵金は、2010年の板橋区立美術館「諸国奇人伝」展で芝居絵4点を初めて見て以来、もっと作品を見たいと思っている絵師である。
2012年に高知県立美術館にて生誕200年の大規模展覧会が開催された。それを知ったときには残り会期が2週間を切っていたし、遠いし。で、代わりに図録を購入。
今回の絵金鑑賞は、10年ぶり。
本来は展示替えも予定していたようなので、東京出品予定4点全てを一度の訪問で見ることができたのは、私的には得した気分。「累」のおどろおどろしさ、「佐倉宗吾」の涙、赤子をさらう「鷲」の両親の必死さ、仇討ちを見事に果たした夫が差し出す仇の首に満足気なお菊。激しい色彩の芝居絵を楽しむ。
2)対決。
対決「寒山拾得図」
狩野山雪
重文《寒山拾得図》
京都府・真正極楽寺 真如堂
vs
長澤蘆雪
《寒山拾得図》
和歌山県・高山寺
対決「虎の毛並み」
狩野山雪
《龍虎図屏風》左隻
個人蔵
vs
片山楊国
《竹虎図屏風》右隻
鳥取県・雲龍寺
+
片山楊国
《猛虎図》
個人蔵
私が勝手に対決させただけで、互いの作品は離れて展示されている。
寒山拾得図の描写の面白さ。虎の毛並みの描写へのこだわり。何度見ても楽しめる。
3)祇園井特の重要文化財作品。
祇園井特
重文《鈴屋大人像》
三重県・本居宣長記念館
祇園井特
《本居宣長七十二歳像》
三重県・本居宣長記念館
祇園井特と言えば、その独特の美人画で知られる。忖度しないというか、リアルというか、理想的には描かず、むしろ特徴を強調するというか。私的には好みだが、重要文化財と縁がある絵師とは想像していなかった。
その重要文化財は美人画ではなく、老人の肖像画。祇園井特らしからぬ普通に見える肖像画。実は、本居宣長の肖像。宣長が亡くなる直前に描き始め、没後に完成させた作品だという。史料的価値なのか。
よく見ると、その老人の肌には、控えめな色だけどしっかりとしつこく皺が描かれている。
その他印象に残る作品。
林十江《花魁・遣手婆図》(茨城県立歴史館)の題名どおり、遣手婆らしい表情の遣手婆と、実に気の強そうな花魁の二幅対の掛軸。
蠣崎波響の「夷狄列像図」の自身によるレプリカと他人によるコピー作品。2015-16年の国立歴史民族博物館「夷酋列像」展で見たブザンソン美術考古博物館所蔵の現存全11図展示を思い出す。
残念なこと。
東京会場出品予定であった円山応挙の重文《七難七福図巻 人災》(京都府・相国寺)の展示がなくなったこと。根津美術館の展覧会で初めて見て以来2回目のチャンスだったが。
あと、曾我蕭白《群童遊戯図屏風》(九州国立博物館)も、あればより楽しめただろう。
気づいた主な感染症予防対策。
・本展は、事前予約制・日時指定制を導入していない。
・土曜日の夜間開館なし。シルバーデーは中止。
・マスク未着用は入館を遠慮いただく。
・1階における入口は1箇所、出口は1箇所に限定。
・入館時に検温。手指の消毒。
・会場入場時、係員にチケットを渡さず、自分で機械にピッとコードを読み込ませる。
・展示室の作品前の床には、保つべき社会的距離の距離目安を示す白いテープ。
・展示室内に図録配置無し。
・ショップに図録の見本は置いていない。代わりに、パネルでの中身紹介+ガラスケース内での実物の見開き頁の展示を用意。