アルチンボルド展
2017年6月20日~9月24日
国立西洋美術館
アルチンボルドは、ウィーンに到着して間もない1563年、《四季》連作-《春》《夏》《秋》《冬》-を制作する。
この連作は、1566年に制作された《四大元素》連作とともに、1569年に神聖ローマ帝国皇帝マクシミリアン2世に献上される。
ウィーン・バージョンである。
このウィーン・バージョン4点が現在どこにあるのかというと。
《春》マドリード、王立サン・フェルディナンド美術アカデミー美術館
《夏》ウィーン美術史美術館
《秋》消失
《冬》ウィーン美術史美術館
続いて、現在ミュンヘンのアルテ・ピナコテークが所蔵するバージョン。
従来は宮廷の工房の産物と考えられていたが、近年では、1563年のウィーン・バージョンに先行して、ミラノ時代に制作された初期作品と考えられるようになっているという。
「それほど洗練されておらず、ぼってりとしたちぐはぐな構成」、「モチィーフの数々が調和しているというよりは、寄せ集められていると言った方がいいもの」。
アルテ・ピナコテークが全4点を所蔵するが、《秋》は極めて保存状態が悪いという。
先日、国立西洋美術館での講演会を聴講した際、ミュンヘン・バージョン4点を並べた図版がちらっと紹介されたが、《秋》は画面上何も残っていないように見えた。
ミュンヘン・バージョンには、建築的枠組みが描かれているが、これは後年他の画家により描き加えられたものといわれている。ルーヴル・バージョンの草花の縁取りと同じである。
もう一つ、本展出品の2組の版画。
ジュゼッペ・アルチンボルドにもとづく
《四季の寓意》
1630-50年
エッチング
オックスフォード、アシュモリアン美術館
ジュゼッペ・アルチンボルドにもとづく
《四季の寓意》
1700年頃
エッチング、赤いインク
オックスフォード、アシュモリアン美術館
2組ともほぼ同じ図像である。
制作時期は17世紀とアルチンボルド没後であるが、この版画の原画となったオリジナル版画は、アルチンボルド生存中の16世紀後半の制作である。
そして、オリジナル版画は、実はミュンヘン・バージョンよりも「単純な構造を持つ、より早い時期のバージョンの姿を伝えている可能性がある」とのこと。
ミラノ時代にウィーン・バージョンに先立ついくつかのバージョンが制作され、それがある程度評判になる。
それが故にハプスブルク家の宮廷画家として招聘される。
ウィーン到着後早速、皇帝献上用のバージョン制作に着手し、比較的短期間に最高級レベルの作品を完成させる。
という話なのだろうか。
そこで、ウィーン・バージョン、ミュンヘン・バージョン、版画バージョン(1630-50)の順に図版を並べてみる。
対象は、《春》、《夏》、そして《冬》となる。
《春》
《夏》
《冬》
徐々に洗練され、完成度が高まり、西洋美術史上燦然と輝く作品に至る。