加島美術と東京国立博物館総合文化展にて、渡辺省亭(1851-1918年)の作品を見る。
【加島美術】
SEITEI 蘇る!孤高の神絵師 渡辺省亭
2017年3月18日~4月9日
加島美術1階・2階展示スペース(中央区京橋)
平成29年4月2日は、明治期の日本画家である渡辺省亭の100回忌にあたります。
これを機に本展では、個人蔵による渡辺省亭の作品を集めた初の回顧展を開催します。
またこれにあわせて渡辺省亭の作品を所蔵する都内各美術館等でも所蔵作品を自館で展示します。
これにより東京都内で渡辺省亭の代表作が同時期に見ることができます。
印象派の画家たちにも愛された省亭の洒脱な作品の数々の魅力をお楽しみください。
花鳥画を中心に30点ほど(展示替えあり)がコンクリート打ちっぱなしの壁面にガラスケースなしの露出展示。鳥や動物の目に引っかかり有り。キャラクター風というか、一主張持っているというか。
【東博】
東京国立博物館本館18室
2017年3月7日〜4月16日
《迎賓館七宝額下絵帖》より12面
明治39年(1906)頃
《雪中群鶏》1幅
明治26年(1893)
省亭は、内外の展覧会で受賞を重ね、洋風表現を加えた花鳥画は、海外での評判も高かった。本図の鶏は、写実的な描写で、生動感に富み、縦長の画面に楕円の車と三角形をつくる鶏の群れが効果的に配されている。シカゴ・コロンブス博覧会に出品された。
日本画家に疎い私だが、渡辺省亭の名はかすかに記憶がある。何かの書籍に出てきたなあ。確認する。やはり、これか。
宮下規久朗著
『刺青とヌードの美術史』
NHKブックス
2008年刊
そうである。菊池容斎(1788-1878)の弟子、渡辺省亭。
書籍の第2章1「菊池容斎の歴史画」にて、菊池容斎の《塩谷高貞妻出浴之図》がカラー口絵扱いで取り上げられる。
そして、その弟子・渡辺省亭の《塩谷高貞妻浴後図》、《塩谷高貞妻》の2図が白黒図版で取り上げられる。
また、第3章1「明治期の裸体画規制」にて、明治22年の『国民之友』の山田美妙の歴史小説「蝴蝶」の渡辺省亭による挿絵が取り上げられる。「裸蝴蝶論争」である。
平家に仕える美少女の蝴蝶が、壇ノ浦の戦いで海に落ちて這い上がったときに若武者に出会うという場面である。裸体の少女は衣を手に持ち、局部は隠されていて、とくに目立つところもない図である。しかし、山田美妙が本文で、「美術の神髄とも言うべき曲線でうまく組立てられた裸躰の美人」と書いたため、これが挑発的であると受け止められ、『読売新聞』の投書に「美術の乱用」だという批判が載り、いわゆる「裸蝴蝶論争」をひきおこした。(宮下氏の著書より)
そう。この書籍が初めての渡辺省亭との接点。
そして、渡辺省亭=ヌードの画家と、潜在意識に刷り込まれたのである。
加えて、2011年3月に横浜・そごう美術館「福富太郎コレクション 近代日本画にみる女性の美」展で、菊池容斎《塩谷高貞妻出浴之図》を見ていて、渡辺省亭も今となっては作品名は確認できないが出品はあったようなので、《塩谷高貞妻浴後図》か《塩谷高貞妻》を見ているのかもしれない。
それで、渡辺省亭の花鳥画に対して反応が鈍いか。