お伽草子-この国は物語にあふれている-
2012年9月19日~11月4日
サントリー美術館
楽しい展覧会。3週連続で通ってしまった。
絵巻は、ストーリーがあるので、とっつきやすい。
今年上期は、東博の清明上河図やボストン美展、MOA美の岩佐又兵衛絵巻展など、絵巻を堪能する機会が多くあった。
本展は当初訪問を予定していなかったが、絵巻がたくさん展示されていると知り、一度は見ておきたいと急遽訪問。
所用の合間の40分弱の鑑賞時間だったが、最初の絵巻3点を見た時点で、はまってしまった。
もう少しきちんと見ておきたいと、2回目の訪問。
ちょうど前後期の切替時期にあたり、ほとんどの作品が入替えまたは巻替え。
もう一度見たかった作品・場面が消えていたのは残念。その分、新たに登場した作品・場面も面白かったりする。
そして3回目の訪問。
作品・場面は2回目とほぼ同じ。
まず、各絵巻に用意されているあらすじ説明のキャプションを読む。
あるくだりに興味を持つと、その場面がどのように絵として表現されているのか期待する。
期待どおりに場面が登場することもある。その絵自体が私の好みにあえば、その絵巻に対する評価は高くなる。
期待する場面が、展示されている場面の前あるいは後の場面にあたっているのか、登場しない場合もある。
そもそも期待する場面が、詞書だけでとどまり、絵として表現されていないこともあるかもしれない。
また、あらすじでは特に興味を持たなかった、あるいは説明がなかった場面であっても、絵自体に惹かれることもある。
絵巻は、ストーリーがあるので、楽しい。
以下、お気に入り作品。なお、前期のみ展示作品には計上漏れがあるかもしれません。
長谷雄草紙(永青文庫)前期
・長谷雄が、鬼との約束の100日を待たずに美女を抱こうとしたために、美女は水となって流れ去った。流れ去る表現。
掃墨物語絵巻(徳川美術館)後期
・白粉と間違えて墨を塗り真っ黒な顔になってしまった姫君。それを見て驚き逃げ去る僧侶。姫君の黒い顔。二人の距離感。
福富草紙(京都・春浦院)
・放屁芸で長者となる者。それを羨んで真似をしようとし、嘘を教えられ脱糞してしまう者。
・本作では糞の表現はなかった(または消えた)が、他の展示作品ではしっかりと描かれている。
地蔵堂草紙絵巻(個人)
・写経中に現れた美女に惹かれ、「写経が終わったら女と寝たい」と書いてしまった僧。
鶴の草子(京博)後期
・「わざわひ」君が大活躍!!
ささやき竹物語(西尾市岩瀬文庫)
・娘に一目ぼれし、就寝中の両親の耳元に、隣室から長い竹を使ってささやく僧侶。
おようのあま絵巻(サントリー美)
・若い女性を紹介された老僧。翌朝見ると、実はおようのあま(老尼)。
松姫物語絵巻(東洋大学付属図書館)
・結婚相手がよくないと家族に殺される娘。娘を想う男性に、娘の霊が現れる。
しぐれ絵巻(個人)
・少女漫画のような男性陣の二重瞼。このような表現は珍しいとのこと。なお、女性陣は普通。
・28歳の女性が描いたとの奥書あり。不本意ながら描いたが、見終わったら火にくべてほしい旨。
蛙草紙絵巻(根津美)前期
・さらした布を食べてしまう牛。それを山の上から見ていた男。お屋敷の床下に閉じ込められた蛙を救う。
賢覚草紙絵巻(根津美)後期
・将来ある娘と結ばれるとの夢のお告げのあった僧。修行の邪魔とまだ幼い(ように見える)その娘を刺す(娘は無事回復)。
百鬼夜行絵巻(京都・真珠庵)
・評判どおり魅力的な妖怪たちが大行進!!
本格派以外に、下ネタや、へたうま系の絵なども盛りだくさん。
浦島太郎関係絵巻が何点かあったが、煙の表現がさまざま。
みなさん楽しそうに鑑賞していた。