大髙保二郎著
『ベラスケス - 宮廷のなかの革命者』
岩波新書(新赤版)1721
「プラド美術館展-ベラスケスと絵画の栄光」にちなんだ刊行なのだろうけど。
刊行日は、2018年5月22日。
国立西洋美術館での展覧会の会期の、まさかの最終週の刊行。
何故このタイミング? と購入に躊躇する。
ベラスケスが上野を去った今、本書によりベラスケスにますます関心をもってしまっても、一体いつになるか分からない次のベラスケス作品を見る機会まで、その関心は維持できない。
とはいえ、展覧会で湧いた興味は抑えがたく、おとなしく購入する。
まだ半分くらい読んだだけではあるが、いろいろな情報、例えば、師パチェーコとの徒弟契約条件とか、王付き画家と王室画家はどちらが偉いかとか、他にどんな宮廷画家が控えていたのかとか、スペイン王室における王家肖像画の流れとか、ベラスケスの最初のイタリア滞在の際のスペインからローマへの旅程とかの情報が得られて、非常に面白い。
巻末に「本書で参照・引用した邦語文献、並びにもっと知りたい読者のために」と題して、30ほどの文献名が挙げられている。
私が持っているのは、一番最初に挙げられた高階秀爾著『名画を見る眼』(岩波新書)と、一番最後に挙げられた2018年のプラド美術館展図録の2冊だけ。1992年発刊の『NHKプラド美術館』全5巻も、他の4巻は持っているのにベラスケスの巻だけ持っていない。
ベラスケスは、私にとってこれまで遠い画家であったのだなあと思う。
あとがきを見ると、本書は「短時日で書き終えることができた」とある。あとがきの日付は2018年3月11日。
展覧会の次の巡回地・兵庫県立美術館の会期(6月13日〜10月14日と、上野より1カ月長い)には、良いタイミングの刊行である。
没落の影忍びよる黄金時代のスペイン。王宮の奥で密かに「絵画の革命」を起こしたベラスケス。画家としても廷臣としても王に重用され、後世マネに「画家たちの画家」と絶賛された人生には、しかし、生涯隠し続けた大きな秘密があった-。絵画史の傑作《ラス・メニーナス》を導きの糸に「革命」の真相に迫る、決定版評伝。
はじめに - モノローグ
1 画家の誕生 - 聖・俗の大都市セビーリャとボデゴン
1 画家の誕生 - 聖・俗の大都市セビーリャとボデゴン
2 「絵筆をもって王に仕える」 - フェリペ四世の肖像から《バッコスの勝利》へ
3 ローマでの出会い - ヴィラ・メディチと古代への感興
4 絵画装飾の総監督 - 《ブレダ開城》をピークに
5 ふたたびイタリアへ - 《教皇インノケンティウス一〇世》から《鏡のヴィーナス》へ
6 封印された野望 - 晩年の日々と《ラス・メニーナス》
終章 晩年の活動と近現代への遺産
あとがき
3 ローマでの出会い - ヴィラ・メディチと古代への感興
4 絵画装飾の総監督 - 《ブレダ開城》をピークに
5 ふたたびイタリアへ - 《教皇インノケンティウス一〇世》から《鏡のヴィーナス》へ
6 封印された野望 - 晩年の日々と《ラス・メニーナス》
終章 晩年の活動と近現代への遺産
あとがき
図版出典元一覧
本書で参照・引用した邦語文献,並びにもっと知りたい読者のために