パウル・クレー おわらないアトリエ
2011年5月31日~7月31日
東京国立近代美術館
クレーは日本人に人気がありますよね。
これまでクレーの名を冠する展覧会が何度も開催されています。
私もクレーは好きです。
一番印象に残っている展覧会は、1993年にBunkamuraで開催の「パウル・クレーの芸術」展。ベルン美術館/パウル・クレー財団の収蔵作品を中心とする全272点、代表作「パルナッソスへ」もあり、私のクレー好きを決定づけた展覧会でした。
今回の展覧会は、パウル・クレー・センターの所蔵作品が中心という。
パウル・クレー・センターは、ベルン美術館が収蔵していたパウル・クレー財団のコレクションと、クレーの息子のプライベートコレクションを移して、2005年に開館した美術館。
元が同じなので、1993年の展覧会みたいだったらいいなあ、と少し期待しつつの訪問となりました。
1)鑑賞ルートが、会場内の表示では、わかりにくかった。
家に帰ってから気付きましたが、出品リストの裏全面を使って、会場案内図と鑑賞ルートが記載されていたのですね。
確認結果、2度も推奨ルートから外れていました。
・「油彩転写」最初のコーナーから次のコーナーへ移る時。誤って次の章「切断・再構成」に移っていた。
・「両面の作品」逆回りしていた。
◇展示構成
プロローグ:自画像
01:現在/進行形 アトリエの中の作品たち
02:プロセス1 写して/塗って/写して 油彩転写の作品
03:プロセス2 切って/回して/貼って 切断・再構成の作品
04:プロセス3 切って/分けて/貼って 切断・分離の作品
05:プロセス4 おもて/うら/おもて 両面の作品
06:過去/進行形 “特別クラス”の作品たち
2)クレーの制作方法
「クレーの作品は物理的にどのように作られたのか」
という点にさまざまな角度から迫る本展覧会。初めて知りました。
「油彩転写」
「切断・再構成」
「切断・分離」
あと、「特別クラス」の存在。
◇油彩転写:クレーが独自に生み出した技法。
素描を描く。
⇒白い紙を用意し、黒く塗りつぶす。
⇒もう1枚紙を用意し、先ほど黒く塗った紙を上からかぶせる。
⇒上から素描をおき、描線を針でなぞって転写する。
⇒水彩絵の具で着彩する。
◇「切断・再構成」
作品をとりあえず仕上げて、2つ以上の部分に切断する。
⇒切断された断片を新たに組み合わせて再構成
◇「切断・分離」
作品をとりあえず仕上げて、2つ以上の部分に切断する。
⇒それぞれ独立した作品とする
◇特別クラス
クレーは、自ら作った作品リストに記載した作品をある時点より、マーケティングの観点から8つのカテゴリーに分けた。
それとは別に、「特別クラス」のカテゴリーを設けた。
これは、自らの制作における模範的作品と画家が考えた作品であり、画家の手元に遺された。
3)油彩画が少ない。
あまり意識していなかったのですが、実はクレーの油彩画を見ることを期待していたよう。
1993年の展覧会は油彩画が相応にあり、かつ代表作も含まれていたので、印象が強かったのですね。
そういう意味では今回の満足度は半分くらいかなあ。
印象に残った作品は、次の2点です。
・嘆き悲しんで(177)
・兵士(23)