東京でカラヴァッジョ 日記

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【画像】「ヨーロッパ古典絵画の輝き ー 模写に見る技法と表現」展(茅ヶ崎市美術館)

2022年06月01日 | 展覧会(西洋美術)
ヨーロッパ古典絵画の輝き
模写に見る技法と表現
イコン画、イタリア絵画、フランドル絵画の技法と表現をさぐる
2022年4月2日〜6月5日
茅ヶ崎市美術館
 
 平塚市美術館のあと、初めての茅ヶ崎市美術館を訪問する。
 
 平塚市美術館とのセット訪問を考えていたため、こちらの展覧会も会期最終盤の駆け込み訪問となる。
 
 期待以上に、見応え&読み応えのある展覧会。
 ルネサンス期の絵画は、何よりまずは工芸品であったのだ、と興味深く見る。
 
【本展概要】
 ヨーロッパの古典絵画は、描かれてから500年以上経ちますが、その精緻な描写と画面の輝きは失われず、今日の私たちを惹きつけてやみません。
 ヨーロッパにおける絵画の技法は、イタリア、フランドル(現在のオランダ、ベルギー)の地域で15世紀頃に完成されたと考えられています。様々な技法と画材が使用される現代の絵画表現のなかでは、ヨーロッパにおいてでさえ、古典絵画の技法は修復の専門家や研究者の間で継承され、一部の画家たちの創作に応用されているのみといっても過言ではないでしょう。近代化の歩みのなかでヨーロッパ絵画を受容してきた我が国では、こうした古典絵画を技法、材料の面から本格的に研究しようする動きはここ半世紀ほどのことで、必ずしも一般に知られているわけではありません。
 本展覧会はヨーロッパ古典絵画の技法と表現に焦点をあてるものです。美術史研究に基づいて技法と表現から忠実に再現しつつも、日本の風土に合わせるために工夫、研究がなされた模写によるイコン画、15~16世紀のイタリア絵画、フランドル絵画などを展示します。さらに普段目にする機会の少ない作品の制作過程とともに、制作に使用される鉱物、顔料などの原料、道具類もご紹介いたします。オリジナルに倣った単なるコピーとは異なる、原画を再現する技術によって文化財を後世に伝える技法と表現に触れていただき、ヨーロッパ古典絵画の魅力を存分にお楽しみいただければ幸いです。(太字表示は私による。)
 
 「古典絵画技法研究会」のメンバーである画家・修復家7名による復元模写の作品45点が展示される。
 
 イコン画、イタリア絵画、フランドル絵画の模写作品を中心に、バーン・ジョーンズやワイエスなど近現代画家の絵画の模写作品も並ぶ。
 
 本展はなんと、一部作品を除き写真撮影可。
 
 そこで、私の好みにより、イタリア絵画とフランドル絵画に限定し、特に気になった模写作品の画像を掲載する。
 
 
【イタリア絵画4選】
 
ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ
《東方三博士の礼拝》部分
作家:松澤周子
 
 
 
 
フラ・アンジェリコ
《リナイウォーリ祭壇画》部分
作家:木島隆康
 
〈解説より〉
 このテンペラ作品に決定するにあたり、無数にあるフィレンツェの美術館やその近辺の美術館博物館を何度もたずねて探しまわり、この作品に決めた。この作品は魅力的であると同時に、アーチ形の縁に描かれた12天使は色数も多様で、これ一枚でテンペラの彩色をまとめて学べると思ったからです。
 
 
サンドロ・ボッティチェリ
《聖母子と天使》
作家:十二芳明
〈解説より〉
 全体に線的な表現であり図解的でありました。設計図のようなであるとさえ感じる。また細部の形が沢山入り、細部表現によって空間感が表示されていることがわかります。
 
 
カルロ・クリヴェッリ
《マグダラのマリア》部分
作家:十二芳明
〈解説より〉
 以前から模写してみたいと思っていた作品です。作者の透徹した眼差が魅力です。さらに赤や緑や青といった純色が金地に映えて愉しく、ずっと見ていたい気持ちにさせられます。また、画材にはその持っている本来の性能があります。このクリベリーの金地テンペラ様式は、卵テンペラの特徴が十分生かされた表現として優れていると感じました。
 
 
 
【フランドル絵画3選】
 
ヤン・ファン・エイク
《アルノルフィーニ夫妻の肖像》部分
作家:渡邉郁夫
〈解説より〉
 模写が完成した後、オリジナルと比べて見るためイギリスを旅行した。この作品はテンペラと油絵具の併用、または乾性油+Xのメディウムによって描かれたという説があるが、今回は油絵具だけでオリジナルの質感に迫ることを目標に定めていた。比較して気づいた大きな違いは、オリジナルは模写と比べて厚塗りだということである。その他に質感や発色や透明感など、さまざまな視点から比較を行ったことで、次回につながるテーマを手にすることができた。
 
 
ロベール・カンパン
《磔刑》部分
作家:渡邉郁夫
 〈解説より〉
 私がこの作品を模写の対象として選んだのには理由がある。初めてこの作品を見たのは、1990年代初頭のことであったと記憶している。当時のこの作品は、修復が行われる前のことでもあり鈍い色の印象しかなかった。しかし、近年この絵と再会したときに、発色が美しくてびっくりした。この時にこの絵を見ていなければ、この制作者の創造性をあやうく見誤るところであった。特に、肌色の表現が魅力的に見えた。今回の模写は、肌色に焦点をあてて取り組んだ。
 
 
ピーテル・ブリューゲル(父)
《鳥罠のある冬景色》
作家:籾井基充
 
 
 
 
 茅ヶ崎市美術館は初訪問。

 JR茅ヶ崎駅南口から、海に向かう小道(高砂通り)を進んで徒歩8分ほどの、「高砂緑地」という緑豊かで日本庭園や茶室・書院もある緑地公園内にある。
 緑地公園から美術館の入口までは長いスロープになっていて、何度か曲がりくねりつつ上っていくので、初めてだと戸惑うかも。
(世田谷の静嘉堂文庫美術館敷地の規模を小さくしたイメージかな。)
 
 以下の文章は、美術館HPの『言葉の地図』-茅ヶ崎駅から美術館まで-  から抜粋。
 
図書館を過ぎて、塀や生垣がつづくのが高砂緑地
その先にみえるのが茅ヶ崎市美術館の看板
門柱の松籟荘に招かれて、そっと中へ入ってみれば ようこそ緑そよぐ小道へ 
さあ、のぼった先が美術館です


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