会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

証券監督者国際機構(IOSCO)によるサステナビリティ関連の企業報告の保証に関する基準設定主体の取組みを歓迎する旨の声明の公表について(金融庁)

証券監督者国際機構(IOSCO)によるサステナビリティ関連の企業報告の保証に関する基準設定主体の取組みを歓迎する旨の声明の公表について(金融庁ウェブサイト)

証券監督者国際機構(IOSCO)は、サステナビリティ関連の企業報告の保証に関する基準設定主体の取組みを歓迎する旨の声明を、2022年9月15日に公表しました。声明の中では、サステナビリティ保証基準開発に関する留意事項についてもふれています。

IOSCOのプレスリリース。

IOSCO encourages standard-setters’ work on assurance of sustainability-related corporate reporting(PDFファイル)

基準設定主体というのは、具体的には、国際監査・保証基準審議会(IAASB)と、国際会計士倫理基準審議会(IESBA)です。

IOSCOは、さまざまな地域のさまざまなステークホルダー・グループと議論を交わしてきましたが、主要なものとして以下のような意見があったそうです。

Since February, IOSCO has engaged with different stakeholder groups – investors, issuers, assurance providers, and standard setters – across different regions and heard the following key messages:
• Among investors, there is growing demand for assurance to enhance the reliability of corporate sustainability reporting (投資家においては、企業のサステナビリティ報告の信頼性を強化するための保証に対する需要が高まりつつある)
• While limited assurance may be the most realistic objective in the short term, investors typically see reasonable assurance as the long-term target, especially in respect of metrics such as those related to greenhouse gas emissions;(短期的には、限定的保証がもっとも現実的な目標であろうが、投資家は、特に、温室効果ガス排出量に関連するような指標に関して、合理的保証を長期的なターゲットとしてみている。)
• Issuers expressed a need for assurance standards that are effective in the current landscape of sustainability reporting and are capable of keeping up with evolving standards and practices; (発行者は、サステナビリティ報告の現在の全般的状況において効果的で、かつ、進展し続けている基準と実務についていけるような、保証基準の必要性を表明している)
• Investors and issuers see consistent and comparable assurance standards for sustainability-related information as key to supporting high-quality assurance engagements (投資家と発行者は、サステナビリティ関連情報に関する首尾一貫し、かつ適切な保証基準が、高品質の保証業務を支えるキーであると見ている)

この声明文では、保証基準設定に関して、以下の3つの留意事項を重要なものとして、挙げています(一部抜粋・要約)。

1. The importance of profession-agnostic standards, timely progress and collaboration

どの専門職であるかに依存しない基準、適時な進捗、および、協力の重要性

IOSCOは、IAASBとIESBAによる、現行基準の規定と原則の上に構築され、保証業務を実施するのが、監査事務所か、非監査事務所かにかかわらず適用することができるような、サステナビリティ関連基準の開発を歓迎する。

IOSCOは、IAASBとIESBAがお互いに協力するとともに、現在使われている他のフレームワークの提供者とも協力することを推奨する。

保証業務の提供者が同一であるかにかかわらず、サステナビリティ関連報告と財務報告の間での保証業務のコネクティビティをサポートするような基準であることが重要である。

2. Focus on promoting transparency

透明性を促進することに焦点をあてること

 IOSCOはIAASBに対し、

・保証対象、適用されている基準、到達した結論、および、限定的保証か合理的保証かに関して、透明性をサポートするような明確な規定を定めること

を奨励する。

3. Addressing challenging issues

困難な課題に取り組むこと

サステナビリティ関連報告は、財務報告と比べて、ナラティブや将来情報が多く、発行者の内部統制の外部にある発行者のバリューチェーンにかかわる情報により多く依存しているという特徴がある。また、異なる様式で開示されたり、異なる文書にまたがって開示されることがある。

IOSCOはIAASBに対し、

・基準開発の際には、ISAE 3000 (改訂), ISAE 3410 および EER Guidanceにおける現行の規定にもとづき、これらの課題に取り組むこと

・どの開示項目を優先して保証対象とするかについて、投資家からのフィードバックを慎重に検討すること

・堅固なメソドロジーと厳格なリスク評価プロセスに関する指針を含めることを検討すること

を推奨する。

日本の会計士協会や大手監査法人は、サステナビリティ関連情報の保証業務を、将来有望な職域と考えているようですが、財務報告の監査証明と違って、会計士・監査法人の専門分野からははずれており、法律上の独占業務でもないでしょう。保証業務を誰がやるのか、というのが、ひとつの問題として浮上してくることは,当然予想されます。監査法人のネットワークでやる場合でも、監査法人ではなく、ネットワーク内の別の法人がやる場合もあるでしょう。

IOSCOも、サステナビリティ関連情報の保証業務をやるのが、監査事務所でなければならないとは考えていないようです。ただ、保証基準のベースになるのは、国際会計士連盟の機関であるIAASBなどによる現行基準ですから、それについて比較的なじみのある会計士・監査法人は、いくらかは有利なのかもしれません。

ESG demand will force structure shift among audit firms, experts say (Accountancy Age)

(補足)

IOSCOの声明に対して、国際監査・保証基準審議会(IAASB)と国際会計士倫理基準審議会(IESBA)から声明が出ています。

IAASB及びIESBA共同声明「サステナビリティ関連情報の保証に関連した基準開発を支持するIOSCOの声明を歓迎」の翻訳の公表について(日本公認会計士協会)

「国際監査保証基準審議会(IAASB)及び国際会計士倫理基準審議会(IESBA)は、本日、国際証券監督者機構(IOSCO)が、IAASB 及び IESBA によるサステナビリティ関連情報の保証基準を開発する作業を支持し、それを歓迎すると発表したことを歓迎する。IAASB と IESBA は、ステークホルダーがサステナビリティ関連情報の保証をますます求めていること、そして、全てのサステナビリティ保証の提供者に適用される堅牢な基準によって市場の需要に応えることが重要であることを認識している。」

「IAASB は、今週会合を開き、サステナビリティに関する保証業務の包括的な基準を開発するためのサステナビリティ保証のプロジェクト・プロポーザルに関する議論を継続し、採決を行う。この基準は、効果的な保証に必要な前提条件が満たされている限り、報告されるあらゆるサステナビリティ情報に対して保証を提供する全ての専門的保証提供者のためのグローバルなベースラインを提供することとなる。」

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「金融庁」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事