7月30日に開催され、中間報告書が了承された、第9回「公認会計士制度に関する懇談会」の模様を伝えるとともに、中間報告書に対する見解が示されています。
その中で、中間報告書の舞台裏がうかがえる記述があったので、紹介します。
「・・・今回の会議の冒頭には、当日付の金融庁の人事異動によって、実質的に懇談会担当の内藤純一総務企画局長、岳野万里夫審議官及び土本一郎開示業務担当参事官の3氏がそろって担当を外れることとなったとの報告があった。・・・まさに事務局のスケジュール優先の取りまとめであったように思われるのである。」
「・・・筆者(町田教授)がとくに問題と考えるのは、第1に、今回の会議の開催が、事前に告知されず、一部には入念な緘口令が敷かれた上で、開催日前日に金融庁のホームページで開催が告知されたことである。」
「第2には、中間報告書を取りまとめる予定の最終回の懇談会になって、突然として、これまでの懇談会では、制度の骨格が固まってからの議論であると先送りされ、十分な議論がされてこなかった試験科目や免除規定について、・・・事務局資料として配布され、かなり明確な形での方向性が示されたことである。・・・このような拙速な形で、十分な議論も重ねずに制度の具体案が既成事実化されていくことは、全くもってオカシナ話である。」
「・・・少なくとも、前回の懇談会では、「制度改正の必要があるのか」「公認会計士試験の合格者を適正化すれば済むのではないのか」といった見解が多くの委員から示され、懇談会の議論を振り出しに戻してしまうような議論となっていた・・・」
「今回の制度改革が実現した際に、明確にメリットを享受するのは、企業内にあって「名刺に書ける資格」を得たいと考える経理担当者等であり、また彼らに会計リテラシーを備えるインセンティブを与えたいと考える企業側であろう。それに対して、この制度を通じて公認会計士資格等を目指す受験生・学生や、彼ら/彼女たちを受け入れる監査法人側は、これによっていかなるメリットを得るのであろうか。」
これを読むと、コンセンサスが得られたから中間報告書をまとめたわけではなく、金融庁側がかなり強引に結論を出したようです。
また、町田教授は、企業側にメリットがあるとしていますが、報告書を読んだ限りでは「財務会計士」は公認会計士の前段階という性格が強く、すでに企業の経理部門などに勤めている人たちにとってさほど魅力のある資格とも思えません。非常に中途半端な資格だと思わいます。(未就職の受験生にとっても、就職しないと実務経験が得られず「財務会計士」資格も取れないわけですから、救済にはならず、メリットはありません。)
おそらく金融庁の担当者が代わるまでに結論を出したという実績を上げたかっただけなのでしょう。
企業会計の9月号でも、「監査業界は次世代の公認会計士をどう教育するか」という座談会記事で会計士制度の問題が取り上げられていました。その中の脇田・早稲田大学教授(前公認会計士・監査審査会常勤委員)の発言も厳しい見方をしています。
「まだ未就職者の問題は解決していない。さらに深刻になるように思われます。・・・「公認会計士試験制度の見直し」という大問題に取り組む前に、喫緊の未就職者の問題の解決対策に焦点を絞って議論を進めるべきだったと思います。・・・」
「未就職者問題の解消対策として、乱暴なことを言えば、試験の実施を当面停止する非常措置を取るくらいの覚悟を持つべきだったのではないでしょうか。・・・少なくとも、緊急対策として現行制度の最大の欠陥部分が、合格者の著しい増大にあるとされるのであれば、なぜ合格者が著しく増大したのか、その原因を早急に明らかにする。そして緊急対策としてどうするかを早急に明らかにすべきです。」
「将来の「公認会計士試験制度のあり方」を喧々諤々に議論しても、現に悪化しつつある未就職者問題の解消の即効薬とはならない。」
監査法人から見ていても、あと数年は、状況は悪くなる一方だと思われます。こうした実態を(中間報告書的にいうと)「周知」させ、受験生の新たな流入をできるだけ減らす努力をすべきなのでしょう。
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