
「2人の夫とわたしの事情」
2010年4月21日 (水) シアターコクーン
原作 W・サマセット・モーム
演出・上演台本 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演 松たか子/段田安則/渡辺 徹/
猪岐英人/新橋耐子/皆川猿時/水野あや/
池谷のぶえ/西尾まり/皆戸麻衣
久しぶり、シアターコクーン。
当日引き替えのチケットを購入したので、どこらへんで見られるかは当日のお楽しみ。
まあまあの席でした。
会場のお客さん、やっぱり圧倒的に女性。友だち同士ってのが多かったかな。
前の席の二人連れは、もうやたら芝居を見てる感じ。話の派手な盛り上がりがすごい。
幕開けから一気に観客を引っ張り込む才能。これはやっぱりケラ演出のたまもの? 脚本の妙味でしょうか。
サマセット・モームの原作は知らないので、私にとっては限りなく「ケラ作品」。
第一幕の最初の松たか子演じる妻とネイリスト?(西尾まり)との会話で、時代が色濃く影響する日常や妻のおかれた状況や、はたまたこの妻がどんなに「かわいくてやっかいな女」かがつまびらやかになる。こういうところの脚本はうまずぎて手慣れてて、ちょっと憎たらしい。
こんなにわかりやすくしなくてもいいのに。私たちはそんなに低レベルの観客なの?とか、天の邪鬼な人は思う。ま、そんなことはどうでもいいけど。
こんなに悪意がなくてかわいくて、で、途方もなく愚かで自己チューな女性…。離れて見ている分にはいいけど、そばにいてほしくはない、なんてつくづく思います(笑)。
最初の夫(戦死したはずなのに帰還する)も再婚した夫(最初の夫の親友)も、もうそこは十分わかっているわけで。だから、決して彼女を取り合ったりはしない。むしろ「美しく、滑稽に、見え見えに」譲り合う。
彼女は自分では決して認めないだろうけど、十分に計算高いところがあるから、時代の流れをちゃんと把握している。だから、戦地での名誉だとか、そんなものはもうなんの値打もない過去の美徳になっていくと思い、三番目の夫には「ロールスロイス」を選ぶわけだ。そう、rich man です。
第三幕では、弁護士を交えて、いかに法的にきちんと「2人」の夫との離婚を成立させるかを三人は模索する。今と時代が違うから、結婚生活の破綻を裁判で裁判官に納得させるのはなかなか大変なわけで。
ここが妙におもしろい。いやいや離婚を受け入れるふりをしながら、2人の夫は嬉々として離婚への試行錯誤を受け入れる。
最後は、晴れやかな表情で、「愛した妻」の門出と、自分たちが勝ちえた自由な生活を祝して「乾杯」するのだ。
観客の大部分はたぶん、妙にほっとした気持ちになって男たちの解放感を受け止め、「あの愚かなロールスロイス」の先々にちょっと意地悪な期待を寄せる。
それでも…と思う。どうしようもなく自己チューで愚かで、でも限りなく「かわいい」あの妻はきっと、世の優しく貞淑な妻がどんなに頑張っても与えられないであろう極上の「ハラハラ」な幸せを男たちに残していくのだろう、と。
だから、人生はおもしろいんだ、きっとね。
松たか子、段田安則、渡辺徹をはじめ、役者がみんなステキ。役者がダメだと、コメディーは悲惨ですから。
2010年4月21日 (水) シアターコクーン
原作 W・サマセット・モーム
演出・上演台本 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演 松たか子/段田安則/渡辺 徹/
猪岐英人/新橋耐子/皆川猿時/水野あや/
池谷のぶえ/西尾まり/皆戸麻衣
久しぶり、シアターコクーン。
当日引き替えのチケットを購入したので、どこらへんで見られるかは当日のお楽しみ。
まあまあの席でした。
会場のお客さん、やっぱり圧倒的に女性。友だち同士ってのが多かったかな。
前の席の二人連れは、もうやたら芝居を見てる感じ。話の派手な盛り上がりがすごい。
幕開けから一気に観客を引っ張り込む才能。これはやっぱりケラ演出のたまもの? 脚本の妙味でしょうか。
サマセット・モームの原作は知らないので、私にとっては限りなく「ケラ作品」。
第一幕の最初の松たか子演じる妻とネイリスト?(西尾まり)との会話で、時代が色濃く影響する日常や妻のおかれた状況や、はたまたこの妻がどんなに「かわいくてやっかいな女」かがつまびらやかになる。こういうところの脚本はうまずぎて手慣れてて、ちょっと憎たらしい。
こんなにわかりやすくしなくてもいいのに。私たちはそんなに低レベルの観客なの?とか、天の邪鬼な人は思う。ま、そんなことはどうでもいいけど。
こんなに悪意がなくてかわいくて、で、途方もなく愚かで自己チューな女性…。離れて見ている分にはいいけど、そばにいてほしくはない、なんてつくづく思います(笑)。
最初の夫(戦死したはずなのに帰還する)も再婚した夫(最初の夫の親友)も、もうそこは十分わかっているわけで。だから、決して彼女を取り合ったりはしない。むしろ「美しく、滑稽に、見え見えに」譲り合う。
彼女は自分では決して認めないだろうけど、十分に計算高いところがあるから、時代の流れをちゃんと把握している。だから、戦地での名誉だとか、そんなものはもうなんの値打もない過去の美徳になっていくと思い、三番目の夫には「ロールスロイス」を選ぶわけだ。そう、rich man です。
第三幕では、弁護士を交えて、いかに法的にきちんと「2人」の夫との離婚を成立させるかを三人は模索する。今と時代が違うから、結婚生活の破綻を裁判で裁判官に納得させるのはなかなか大変なわけで。
ここが妙におもしろい。いやいや離婚を受け入れるふりをしながら、2人の夫は嬉々として離婚への試行錯誤を受け入れる。
最後は、晴れやかな表情で、「愛した妻」の門出と、自分たちが勝ちえた自由な生活を祝して「乾杯」するのだ。
観客の大部分はたぶん、妙にほっとした気持ちになって男たちの解放感を受け止め、「あの愚かなロールスロイス」の先々にちょっと意地悪な期待を寄せる。
それでも…と思う。どうしようもなく自己チューで愚かで、でも限りなく「かわいい」あの妻はきっと、世の優しく貞淑な妻がどんなに頑張っても与えられないであろう極上の「ハラハラ」な幸せを男たちに残していくのだろう、と。
だから、人生はおもしろいんだ、きっとね。
松たか子、段田安則、渡辺徹をはじめ、役者がみんなステキ。役者がダメだと、コメディーは悲惨ですから。