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家の近くの昼間でも薄暗い杉林は今ミズヒキの赤い花が盛りだ。この花は日陰を好むのか、日の当たる場所のミズヒキに比べ杉林の中に育つミズヒキは随分背が高くなる。この花びらを下から見ると白っぽく見える。上から見ると赤く見える。故にお祝いの時に使用する水引に似ているのでミズヒキと呼ぶそうだ。
幼い頃、ままごと遊びのときミズヒキの花びらを集めて『ごはん』にしていた。蕗の葉をひろげその上にミズヒキの赤い花びらをたっぷりのせて巻き寿司のようにくるりと巻く。
うまい具合に出来上がったミズヒキの巻き寿司は誠にきれいだった。だからと言って今その遊びをしてみようとしない余裕のなさは何だろう。遊び心の一つや二つ多忙にめげず持ちたいものだ。
無数のミズヒキの花に囲まれると静寂すぎる杉林だけにミズヒキの花たちの愉快な会話が聞こえてきそうだ。