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初夏にヒメシオンで占められていた廃屋跡も季節はひっそりと変化している。いつの間にか、ニラが精力的に屋敷跡を埋めている。近辺の畑からニラの種子が飛んで来たのか、もともと庭に植えられていたのか白い花は匂いさえ忘れれば清楚で美しい。雑草を物ともせずに生き抜いているということは、強い植物の一つだろう。
主(あるじ)が居なくても家は何事もなかったように黙したまま建っている。ニラの花にキマダラチョウらしきお客さんが舞い降りていた。一家の歴史を詰め込んだ家も廃屋となれば、四季の移り変わりだけが確実に訪れることに何か空しさを覚えるのは歳のせいだろうか。
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No2. 9月15日の早朝、大型で強い16号台風が沖縄付近で大暴れしている最中のくじゅう連山の大船山(左)と黒岳(右)の山容だ。前に記した事があるが、右側の黒岳を御仏のお顔と見て寝釈迦に見える。最も私の個人的な思いだが、お顔の付近は優しい水色の空に雲の子供が遊んでいる。それでも、お腹(大船山)あたりは台風の兆しが見えるような気がする。嵐の前の静けさとはこんな空模様なのだろうかと思いながらシャッターを押した。