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「空へ向かう花」
ハルとカホは違う小学校に通う、六年生。接点などなかったふたりが、運命のいたずらによって引き寄せられる。心に傷を負った少年、少女、そして彼らを見守る大人たち。それぞれが懸命に、前を向いて歩いていく―。
どうしようもなかった不幸なできごとになすすべもなく翻弄される小学6年生。
現実にありうることだと思うとぬるーい場所で生きている分には怖くて仕方ないお話。
でも、それに気を遣いつつ、気を遣いすぎずにそばに居てくれる大人が現れた。 良かった。
読んで、よかった。
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「ラプソディ・イン・ラブ」
ろくでなしでも、世間は名優と呼んでくれる。役者とはそういう職業だ。山と海に囲まれた、とある町の古い日本家屋。かつてそこは、日本の映画界を支えてきた笠松市朗が、愛する家族と過ごした家だった。笠松の息子、俳優・園田準一、笠松の前妻であり女優だった園田睦子、そして人気俳優で、笠松の二番目の妻との間に生まれた岡本裕。岡本の恋人である、人気女優の二品真里。バラバラになっていた彼ら五人が笠松の家に集まった。彼らの葛藤と思いが交錯するドラマの幕がいま開く。みな役者という彼らが、ひとつ屋根の下展開していくドラマ。「ラプソディ・イン・ラブ」――監督、紺田がつけたタイトルだ。彼らの言葉は、台詞か、真実か……。「東京バンドワゴン」シリーズの著者が描く家族の肖像。
一本の映画を観ているように読み進めた。
役者であり、親族である人たちの「独白」がとてもとても興味深く進んでいく。
「我が息子ながらいい表情をする」「そうきたか、でもこちらも負けないわよ」役者魂全開で張り合う老若男女。
小説だからできる・・・と思わせる展開が面白くて、(いや、映像にもなるのかもしれないけれど)読み終えるのが名残惜しかった。 読んで、よかった。
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