何もない川に晒し場を作るところから。
これも研修の一環です。
川から遠い山側の工房では水からあげて広げ万編なく太陽をあてる「あげ晒し」を。
雪の多い豪雪地帯では雪晒しがおこなわれています。
川に近い工房は川に広げる「寒ざらし」を行っていました。なぜ、川晒しではなく寒ざらしなのか?昔々は夏は農期、畑や田んぼをしたり、蚕を育てたり。
楮やトロロアオイは冬前に収穫されるので、冬に漉く。冷蔵庫やクーラーのない時代はそれが普通でした。暑さに弱いのは人ではなく、楮やトロロアオイ。植物なので腐ってきてしまうのです。
また夏は川の水が多く速いため楮が流れてしまいます。
あげ晒しは今も行っていますが、寒ざらしは一年に一回。何故か?
私の師匠、はぎさんは大正生まれの102歳。
師匠の時代は寒ざらしを通常の仕事として行っていました。
所が1959年(昭和34年)に伊勢湾台風が上陸。美濃でも大変な被害があり、多くの方が亡くなったそうです。その伊勢湾台風で川が削られ、川の形が変わり、手前にあった川岸が対岸に行ってしまったとか。
その後堤防が出来、簡単に川に降りることが出来ず、楮を晒すことが出来なくなりました。
今では工房の一角に晒し場を作り、そこに広げています。
それでも、その文化を絶やしてはいけないと、年に一回は行っています。絶えてしまうと復活するのは大変な労力がいる為、
これは楮を晒すことより、囲いを作ることの方が重要なのです。
気象を気にして、地形を理解し、川の流れを読んで囲いを作ります。
完全に塞いでしまうことなく、楮が流れない位のある程度水の流れを作る。
今年は台風も来ず、秋の雨も少なかったので川の底ににゴミが溜まり固まった状態なので、
まずは川の底をさらい掃除から。
上流には取材や撮影の方々が入るので、まずはそこから。皆さん良いカメラなので、滑って壊してしまっては大変!石で滑らないように大きな石を除き、また石の下にゴミが挟まっているので底をかき綺麗にします。
また、川の流れが直接晒し場に入らないよう、流れをかえて逃がす石積みも。
晒し場に良さそうな場所は、大きな石を取り除き囲い用周りに石を積んでいきます。
これはとっても腰にくる。昨年はこれで腰を痛めてしばらく紙が漉けなくなりました。
こういう重いものは腰を落として足で持ち上げないとね。手も挟まないように慎重に。
大きな石がなくなったらジョレンで底をかきゴミをさらいます。そうして綺麗になったところに平たい石を並べ、竹ぼうきで石についたゴミやぬめりをとり、最後に皆で足踏みをし地固めをして完成。
一日で川の流量が変わるので天候をチェック。
晒し場に入る水量は当日微調整をします。
昔の話では、晒し場は作ってしまえば後はメンテナンス程度で良いのですが、なんせ川に広げてあるので、楮泥棒が持って行ってしまうこともあったとか。
楮を晒したら夜もおちおち寝てられなったそうです。昔は大変だったんだな。
この文化は繫いでいかなきゃいけな大切なもの。川と生きる川の民に受け継がれる伝統なのです。
寒ざらし当日は雪が積もりました
絵になりますね
川の流れに身を委ねる楮
川の一角に作りました
雪だるま達も見守っています
上から見るとちょっと不思議な光景
・・・だからか、そういう生活のコツとか伝統文化の要素が入った漫画を好んで読みます。今はゴールデンカムイ。そんな面白そうな漫画があったら教えてください♪
仕事の後は焚き火で焼いた石焼き芋も楽しみです♪