脚本 『雪の女王』

映画で人気のある 雪の女王 について調べたら、大人向きに話がだいぶ変わっているとのこと。

紙芝居でも出版されていました。いわさきちひろ画のシリーズの一つです。16枚で長いので使いにくいと思っていました。
よく見ると、バラの花が咲く画面ではじまっていて、季節的に今やってもいいようですので、脚本を短くしてみました。10分位になるでしょうか。
叱られるかもしれませんが、「ちっとも寒くないわ」という決め台詞も入れてみました。
演じる方の参考になればと思います。 

雪の女王

   原作/アンデルセン  脚本/稲庭桂子   絵/いわさきちひろ(童心社昭和51年初版)を石倉が書き変え

1 バラの花がいっぱい咲いている夏の日のことです。

あるところに、カイという男の子と、ゲルダという女の子がいました。二人は本当の兄弟のように仲良しでした。

 

2 二人はおばあさんに おはなしをきいています。

「ほんとうかなあ、悪魔ってほんとうにいるのかなあ」

「さあね、私もあったことはないがね、悪魔は子どもがしあわせなのを見るのが、大嫌いなんだと。それで、子どもをさらって、冷たい暗いところへ つれてってしまうんだとさ」

「ふーん、だけど悪魔なんて来たってへいきだよ」「そうね、もしカイちゃんをつれにきたらあたしだってやっつけちゃうわ」

「ああそうだね、二人とも助け合って仲良くすれば、悪魔なんかこわくないんだよ」

 

3 その年の冬。雪がたくさんふりました。

「わーい、すべるすべる、ねえ、この雪の中に、雪の女王がいるかもしれないよ」

雪の女王は 顔も体も氷でできていて、雪の毛皮を着ています。そして悪魔の力を持っていてどんなものでも氷の塊りにしてしまうというのです。

 「あっ、ここに白いそりがあるよ。僕のそりをくっつけよう」

けれど、その白いそりは、雪の女王のそりだったのです。

(ぬきながら) そりはとつぜん飛ぶように走りだし、やがて

 

4 とまりました。ここは深い深い雪の中です。

「おや、寒くて震えているの、私の毛皮でくるんであげよう」

それは雪の女王でした。「カイや。私と一緒にいくかい。世界のはてまで」

白くてきれいな雪の女王をみていると、カイはゲルダのことも、うちのこともみんな忘れてしまいました。「女王様、ぼくを連れていって。僕は絵本も読めるし、100までも数えられるんだよ」女王は、少し笑ったようでした。

 

5 カイはいなくなってしまいました。町の人たちは、カイは川へ落ちて死んだのだろうといいました。

「カイちゃん、本当に死んでしまったの?いいえそんなこと嘘だわ。あたし、探しに行かなくちゃ」 もう春になっていました。

(三分の一抜く)

ゲルダは一人でカイを探しに行きました。長い長い間、歩き回りました。どこにもカイはいませんでした。やがて秋になり、ふと向こうを見ると、

 

6 山道を誰かがやってきます。トナカイを引っ張っています。「あの人にきいてみましょう」 すると、

(抜きながら)「つかまえたぞ」

 

7 「にげたらしょうちしないぞ」

「きゃっ、あなたは誰」

「あたしかい、あたしは山賊のむすめさ。この森は、山賊のすみかなんだよ。ところでお前は誰だい?どうしてこんなところに来たんだい?」

「あたしはゲルダ。カイちゃんをさがしにきたの」「カイちゃんて、だれさ。まあいい、家に行って話を聞こう」

 

8 ここは山賊の家です。向こうではおそろしい山賊が酒盛りをしています。ゲルダは怖くて体がふるえるようでしたが、娘にカイの話をしました。するとトナカイがいいました。

「わたしは、男の子が、雪の女王のそりにのって、北の方へ飛んでいくのを見ましたよ。あれがカイちゃんかも知れない」

「えっ、雪の女王ですって。それはきっとカイちゃんよ。ねえ、トナカイさん。そのそりはどこへ行ったんでしょう。教えてください。」

 「私のうまれた北の国より、もっとずっと北のほう、北極のあたりかもしれません」

「ああ、トナカイさん。道を教えてください。私カイちゃんを取り戻しにいかなくちゃ」

 

9 「ゲルダ、ほんとうにそんな遠い、恐ろしいところに行くのかい」「ええ、どんなに遠くても、どんなに恐ろしいところでも」

 「よし、わかった。トナカイに乗っていくといいよ。それから寒くないようにあたしの手袋と長靴をあげるよ。それからパンとハムも。おや、ゲルダ、なんで泣くんだい」

 「あんまりうれしくて。こんなにやさしくしてもらって」

「おまえがあたしを 優しい心にしたんだよ。ゲルダ、おまえは強い力を持っている。だから誰だってあんたを助けずにはいられないのさ」

 

10 トナカイはよるもひるも走りつづけました。見渡す限り広い広い氷の世界。空には青いオーロラがもえています。

 そのころ

 

11 雪の女王に連れていかれたカイは、お城にいました。冷たい氷がチカチカひかるだけで、花も無く、鳥もいないところです。カイは、心も体も半分氷になっていました。

「おほほほ、もうしばらくするとおまえは、ただの氷のかたまりになってしまうんだよ。

私は、ちょっとでかけてくる。そして、わたしが帰ってくるまえにおまえの心の氷がとけて わすれていたことを思い出さなければ、おまえはこれから先、けっして家へは帰れないんだよ。」

 

12 こちらはゲルダです。トナカイに別れてたったひとりで雪の女王の城へすすんでいきます。なんという寒さでしょう。

「ああ、あそこ、あそこにカイちゃんがいるんだわ。もうすこしよ」ゲルダは駆け出しました。すると、

  

13 (画面をゆらしながら)

「かえれーかえれー ひゅーひゅー」おそろしい雪の兵隊がゲルダにおそいかかりました。雪の女王を守る兵隊です。「かえれーかえれー 進むと命はないぞ」

「カイちゃーん、カイちゃーん、どこー。ゲルダがきたのよ。カイちゃーん」

そのとき、雪の間からチラっとカイの姿が見えました。ゲルダの身体に強い力がわきました。「あと少しよ。ちっとも寒くないわ」

 

14 「カイちゃん、カイちゃん。ああ、まるで氷のお人形みたい。カイちゃん、ゲルダよ、とうとう見つけたわ」

 ゲルダは泣きだしました。そして、熱い熱い涙がカイの身体にかかりました。

 その時、パチン。カイの身体の氷がとけはじめたのです。

 

15 カイのこころの氷も、どんどん解けていって、あたたかい血が体の中にながれだしました。

「ゲルダちゃん、ああゲルダちゃんだ。ずいぶん長い間あわなかったねえ。ぼくは今までなにをしていたんだろう」

「カイちゃん、いっしょにうちへ帰りましょう」

「ああそうだ、ぼくのうち。おばあさん、おとうさんやおかあさんがいるうち」

カイはみんなおもいだしました。雪の女王の悪魔の力のために忘れていたことを。

「ここは なんて寒い、なんてさびしいところなんだ。さあ帰ろう」

 

16 ふたりは 帰り道を急ぎます。

「おばあさん、きっとあたしたちのこと、心配しているでしょうね」

「うん、ぼくはおばあさんにおはなししてあげるんだ。雪の女王のおそろしいこと、そしてゲルダちゃんはその雪の女王の悪魔の力よりずっとずっと強いってこと」

 やがて、二人が家に戻ると、もう夏になっていて、あちこちに きれいなバラも咲いていたということです。

 

                         終わり

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