図書館・語り・紙芝居・集団相手の絵本よみ・ボランティアなどについて書きます。
絵解きボランティア
原稿「主婦A子さんの真実」
NPO法人語り手たちの会の機関誌『語りの世界』61号に、寄稿しました。創立40周年記念プロジェクトで、「記録して伝える」という総タイトルがついていて、これから会員すべてが書いていくことを目標にするそうです。理事長片岡輝さんの前書きを読んで、私の書いたものはピントがずれていたわけではなかったのだな、と、ちょっと安心しました。先着順だったのでしょうか、私の原稿が一番最初に出ていました。
地域に残る言い伝えや風習や自身の暮らしぶりを記録して、次の世代に伝えるプロジェクトだそうです。
主婦A子さんの真実
新潟市 石倉恵子
ふた昔も前の話です。私の住む自治会の古紙回収作業は、主に現役を離れた男性たちの仕事でした。男性の有志が、年に数回土曜の朝に、各家庭の前に出された古紙の束をリヤカーに積んで集積所まで運ぶのです。けれど運ぶ人が年々減ってきて、中学生や女性の参加を促すことについて、自治会役員会では意見が交わされていました。
男性陣の心配は「力仕事なので、もしも大事な中学生に怪我でもされたら」ということで、大人である主婦に手伝ってもらいたい、というのが主張です。私たちにしてみれば、土曜の朝でも忙しく、おまけに主婦だからいいだろうという男性の思いも見えて、意見はかみ合わず数年が過ぎていきました。
ある年の冬の役員会も、20人位が車座になってこのことで話し合いが続いていました。どちらも譲らず、みんな疲れ果てていました。そんな中、主婦A子さんがつぶやいたのです。
「中学生なーんてさ、ケガしてもすーぐ治るし。けど、あの人たちなんかぜーんぜん治らないんだよね。」この小さな声は、男性陣のところまでしっかり届いたようで、皆、急に黙り込み、私たち女性は笑いをこらえて肩を震わせました。
やがて春になり、リヤカーをひく男性陣に混じって中学生の姿が見えるようになりました。みんななんだか楽しそうです。ただ中学生は、ごほうびに支給されるお金のことを想っているだけなのかも知れません。ちなみに事業の目的は、今は「世代間交流」です。
何年経っても思い出し笑いをしてしまうこんな話ですが、面白さのポイントは、見方が変わると弱者と強者が逆転する滑稽さと、本音の一言で問題が解決されることにあります。ならば、それらを軸に、働き者の蟻にでも例えて「ママあり」「アリじい」「アリオ」の笑い話になるかも知れません。いつの世も、子どものためにと大人が安全すぎるレールを敷いてしまうこともあるので、笑いに乗せて楽しんでいけたらと思っています。
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