松谷みよ子(この作家はほとんどキーワードになっているので呼び捨てですいません)の本をいくつか読んで、たまたまとても気に入った話がありました。
「いたちの子守唄」という話です。とても情緒的な話で、かわいい女の子が住む長者屋敷で、厳しいばばさまが、あの子はだめこの子はだめと、女の子を友達と遊ばせないところから話がはじまります。
友だちではなく、「あの本はそこがだめ」「この本はここがだめ」という時期を体験した私には、身につまされるものがあります。40年も前の近代化の真っ最中、少しでも良い友達に触れ合えば子どもは幸せになるという大人の思いはとても強かったのでしょう。松谷みよ子も、原話の話者もそこに注目したような気がしてなりません。
今も「子ども時代は短いから良い本だけ」の先生方はお元気で、あちこちで講演されています。生涯学習は先生から習うことがそんなに大事なんだろうか・・・・・。
それはさておき、話の結末も納得がいくように形よく作られていて、作家の手が入ったな、という感じかしました。
これを元に、本をいくつか探してみました。関係する本を3種書きます。最初たまたま読んだ本は①です。
① 『読んであげたいおはなし 松谷みよ子の民話(上)』松谷みよ子/著(筑摩書房)2002年です。きっともっと昔の本に載せてあったのではないかと思いますが、これが いくつかの本に転載されていて、絵本も出ています。あとがきに、山形県のおはなしのような書き方がされていたのですが、はっきりしません。『日本昔話通観』の山形編と新潟編を見てみましたが出ていませんでした。独立伝承型の話で、とても特殊な話だと思っています。
② 絵本は『いたちのこもりうた』松谷みよ子/作 石倉欣二/絵(ポプラ社)1981年 です。このあとがきに、③の『絵姿女房』の中の話を元にして作ったという風に書いてありました。話のバトンを渡す、というような書き方もあり、民話として伝承したいのだなと思いました。
③ 『絵姿女房 越後の昔話』S48年(1973)初版 佐久間惇一/編 臼田甚五郎/監修(桜楓社)(話者は豊浦町切梅 波多野ヨスミ)
豊浦町は、その後、新潟県の新発田市と合併しました。新潟県の北部の町で、豊浦から北に向かい中条に出て右折して荒川沿いの国道113号線を1時間ほどいくと、やがて赤い鉄橋の小国町に着きます。①のあとがきに出てきた「羽前」地域です。
古い順に並べると、③波多野ヨスミ → ②松谷みよ子 → ①松谷みよ子 です。
型にはまった昔話の魅力のほかに、情景がくっきりうかぶ情緒的なファンタジーとして、この話はとても魅力があります。
山形をはじめとした東北地方の幾つかのおはなしの団体が、何度かこの話を語っていることを ネットでみつけました。春の悲しい話ですが、この秋の学校訪問に使い、もちネタにして また春が巡ってきたらどこかで語りたいと思います。