良書は子どもを育てるか

巷では「物語で子どもを育てる」「絵本の選び方」など、例年のとおり読書関係の講座がにぎやかに行われています。
自分で幅広く情報をとるのでなく、行政(お上)の敷いたレールを行くことが、読み聞かせボランティアの王道のようになっています。

特に新潟市は良書主義の方々が多く、20年前からほとんど同じ系列のグループから講師がおいでになって、良書をとりあげてブックトークをすることがずっと続いています。それじゃあブックトークの会であって、講座ではないと思うんだけどね。
 また、家庭文庫の系列の先生が、家庭文庫で収まっているのならばいいのですが、それがイコール公共図書館のやり方(とくに県の行政にくっついていますよね)になっているのが変なんじゃないか、と私は思っています。それならばその家庭文庫の資金で県立図書館を動かせばいいのに。  家庭文庫をずいぶん昔にやっていたという先生は、では、そのやり方で今もできるのかどうか検証する必要があり、それでこそ人に教える資格があるというもの。市民は講師をしっかり批判的に見る習慣を持てればいいのですが、そういう細かいことは関係ないのでしょう。

「現役東大生が教科書よりも役に立った100冊」柳川範之/監修(宝島社)を読みました。筑摩書房の小冊子に斎藤美奈子さんがコメントを書いておられたので気になって本を手に取りました。「役に立った」という言葉をどうとるかとか、アンケートの設問がよくわからないのですが、つまりは「記憶に残った」ということかな、というのが私の判断です。

紹介された中には、児童書もたくさんありました。子どものころに読んだものが強い印象になっているのでしょう。学生がそれらにつけたコメントが幼い感じを受けるのは、それはまっとうなことだと思います。学生は、それらを読んだ頃に時空移動して、その当時の自分の言葉で書いたのだと思うからです。それらのアンケート回答を引き出した教授の力量もすごいですね。きっと、とても安心できる先生なのでしょうね。背伸びをする必要のない先生なのでしょう。
 学生がピックアップした本は、「エルマーとりゅう」などの名作もありましたが、「かいけつゾロリシリーズ」「ガラスの仮面」「一休さん」「ONE PIECE」「ズッコケ三人組シリーズ」「ちいちゃんのかげおくり」など、良書主義の先生方がお怒りになるようなものもたくさんありました。でも、私が思うことは、学生たちは、ちゃんと子ども時代を保証され、また自由な読書を保証され、自己肯定することができる環境にあったのではないか、ということです。
 20数年前に私が絵本講座で習った「良い本を読むと、おもしろいので次も読みたくなる」→「次々と読書する」→「文字を読むのが習慣になる」→「学力がつく」→「いい学校に入れる」→「幸せになる」という図式は、今、これを読んでますます情けない情報のように思えます。聞いた当時も「???」と思いましたが。もちろん東大に入ることがいいことだ悪いことだとかいうのは別にしていますが、彼らは情報の良しあしでなく、どんなものからでもいろんな情報を引き出すことが自然にできるんじゃないかと思います。
 斎藤さんは「こういうのが官僚になって日本を動かしていくんだな」などとと締めくくっておられますが、私は良書ばかり読んで育った官僚のほうが恐ろしい。新潟市で、20年間以上も同じ系列・同じメンバーの講師を迎えて、何の疑問もなく、お上に仕えるボランティア育成をやる官僚がいて、そんな今の状態が、まさに優等生のやる仕事そのものですよね。
 それから、柳川先生の言葉「どんな名著といわれる本よりも、ワクワクする本を選べ」を、私は支持します。この本は、「大学の先生必見」とも書いてありました。新潟市の講師の先生方は、「けしからん」で済ませずに、ファンタジーを語るよりも現実の動向を見て、対応していってくれるといいなあと思います。
 

 

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