図書館・語り・紙芝居・集団相手の絵本よみ・ボランティアなどについて書きます。
絵解きボランティア
読み継がれるかどうかは二の次
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/df/702a86d910c1859918347d0928c7c848.jpg)
書く内容がだんだん「紙芝居の窓」みたいになってきました。会の名前をはずしたので、自由に書けるような気がします。
その「紙芝居の窓」には「選書」ということで「目玉焼き型」のことを書きました。図書館の人が説明するのを聞いたことがあり、また、各種『児童サービス論』の本にも書かれているのでご存知の方も多いかと思います。イラストに書いたように中央に黄身のように「長く読み継がれてきた本(偏狭な児童文化の本=大人が子どもに読ませたい本)」を置き、周辺に「これからそうなりそうな本」のグループを白身のように置き、それ以外に、「私たちの読むものがない」と言われると困るのでそういった人のための本を置く、そういう基準で本を選ぶというものです。
これについての異論です。
まず、第1に「読み継がれそうかどうか」という物差しを、司書があてはめて決めるのは、とても不遜なことではないかと思うこと。前のページに書いたように、人々が敷石のように支持を集め、その上を枕木が乗っていくという構図が大切だと思うから。つまり、支持の結果、そうなっている・・・はずなのに、枕木が先導するようなことになっているから。
第2に、文章として成立している図書館の選書基準との食い違いです。まず、文章では「幅広く収集する」ということが謳われています。これが優先のはず。ところが、「教える側」になると、なんとか「教える」ようなことを言わなくちゃいけないので、司書や絵本講師の皆さんはこのようにおっしゃいます。
「絵本の奥付を見ると、出版年や増刷回数が書いてある。20年以上読み継がれた本かどうかがわかる。とてもわかりやすい選び方」。 聞く側は、それを「お買い得情報」として認識して、「こういう本を選ぶといいんだな」「わかりやすく教えてくれるいい先生」と認識し、やたら古い本とか、大人好みの意味の深ーい本を選んでくるとか、そういう事態になっていきます。結局、「幅広く」よりも「読み継がれた」事の方に重点があるかのように思われていきます。
第3に、人に、「差別的な意識」を植え込む大きなきっかけになる、ということです。「自分たちの読む本がないと言う方々がいると困る」という、司書のご説明に、割り切れない思いをずっとしてきました。本を分類しているはずが、いつの間にか人間を分類している。ちょっとひどいんではないでしょうか。ボランティアにもそれをやれと教えているようなもの。分類は、
① 司書というグループ(選書する側の人間)
② 司書から見ると教育しやすい市民の層
③ 司書グループが良いと思う本についていけない市民の層。この層が「自分たちの読むものがない」という。司書は自分では一市民なのに、この層には絶対含まれない。
私たちは、分け隔てなく、身なりや様子に関係なく相手を尊重して、フラットで民主的な世の中を目指そうとしているのに、行政が差別助長をしているようなもの。
司書という自分たちだけが特別だという意識はないだろうか。ボランティアに向かって「皆さんもたまにはコンサートに行って、良い文化に触れて」などと平気で発言してきた司書や講師も多い。この場合の「皆さん」は「コンサートなどに行ったことのない人々」であり、自分たちはそれとは違う「コンサートに行って高い文化を知っている」階層である。これと同じ匂いをさせていると私は思います。
こういう事態になったのは、すべてその「目玉焼き型」の判断方法を、図書館司書が大切に持っているからではないでしょうか。もちろんそれもある種の方法です。そういう選び方もあるから、それを聞いてきた私は反論することもなく、まあね、そういうのもね、と心の中でつぶやきます。幅広く、ってのが優先なんだから、その次にそれもたまにあってもいいよね、という程度の気持ちでした。
だから、「長く読み継がれるかどうか」というような物差しを一本だけ振り回すのでなく、いろいろな物差しで選んでみたらどうか、というのが私の考えです。ピザ型と自分で命名して書きました。特に、「子どもに媚びた本」として隅に追いやられた本は、違う物差しで見るとそれは子ども文化を研究した本でもあるのです。「子どもに媚びた本などない」という学者もいるのに、図書館側はそれを隠してきた様子もある。そういう物差しこそ大切なのではないでしょうか。
これは、「良いテキストを1つ選んで、それを暗記する」という、ストーリーテリングのやり方と同じなのです。とにかく一つの方法に決め、それ以外を複合しないという意思が見える。こういう司書にレファレンスを頼むと、とにかく司書好みの1冊しか紹介してくれないんだろうか、とちょっと不安になる。何よりも、選ぶのは受け手であるし、選ぶ過程で想像力が働き学んでいくというのに。
« 二通りの歴史 | ブックスター... » |
コメント |
コメントはありません。 |
![]() |
コメントを投稿する |
![]() |
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません |