この日、ご一緒したみなさんは……

私の“伝芸の師”KKさん、“歌舞伎座の主”Yさん、
画家の朋百香さん、ミュージカル部総裁のSさん、
そして、お会いするのはもしかして3年半ぶり?
“うう女”のJ姐さん。
開演前に、半蔵門のグランドアークでランチ
(写真右下は私がいただいたハンバーグ)。
6人も集まると、もう互いの装いを鑑賞するのが
楽しくて楽しくて。

帯周りコレクション

J姐さんのコーデはさすがアート!
こういう三分紐&帯留め使い、見習いたいなぁ。
羽織紐はマグネットで左右がくっつくタイプだそう。
KKさんの帯はこの日おろしたという手描きのバラ

フューシャの帯締めに、雪をイメージしたクリスタル調の帯留めがキュート。
Sさんは、演目に合わせて黄八丈。山下八百子さんの綾織は繊細な色の移ろいが
とても美しい。
朋百香さんは、鹿をこの時期はトナカイに見立てた
物語のある帯。やはり帯締めがポイントに。
Yさんは雪の結晶が鮮やかな帯に、道明のニュアンスある平組が映えてステキ。
------------------------
さて、ここからは文楽の感想……。

今回の2演目「大塔宮あさひの鎧」と「恋娘昔八丈」は
まったく異なる趣だが、共通点が2つあった。
1つは、どんでん返し。そしてもう1つは、
カン違い男が出てくること。
「大塔宮-」は、後醍醐天皇VS鎌倉幕府の構図で、
幕府の京都支部である六波羅の守護職、常盤駿河守が、
天皇の后で六波羅方の預かりになっている三位の局に恋してしまう。
何とかして自分の屋敷に通ってきてほしくて、いろんな贈り物をしたところ、
彼女からも返礼の贈り物がきて……
「ちょっと太郎左衛門、これ見て!」
うきうきしながら重臣の斎藤太郎左衛門を呼ぶ。
「鳶の羽に鯉の柄の灯篭をもらっちゃった!
これってさぁ、
『恋に心は飛び立つばかり』って僕に告ってるよね、ね?」
「あとこれも見て!帆かけ船の浴衣だよ! 帆かけの帆は“ほの字”のほだよね、ね?」
斎藤太郎左衛門「……。それは“あほう”のほだわ」
案の定、三位の局はぜんぜん、このカン違い男にその気はなくて、
怒った彼は、局の息子の首を切れ、と斎藤太郎左衛門に命ずる……という展開に。
次の「恋娘昔八丈」も、
店主の娘、お駒に好意を寄せる番頭、丈八が、
お駒も自分を好いているとカン違いし、
「今晩、好きでもない男が婿にきちゃうんだろう?
じゃあ、駆け落ちしちゃおうぜ!」とたきつけたり、
「そうだ、婿になる男に毒盛って殺しちゃえば、
オレとお駒は結婚できる!」と毒を買いに走ったり、
結局、この男は、お駒がのちに自分の夫を殺してしまう遠因となった、
ある犯罪に関わっていたことが明らかになる。
文楽にはよく、誤解や行き違いが大きな騒動や悲劇を生む場面があり、
そこから生まれる登場人物(人形)の情が見どころの一つでもあるが、
今回はそう頭や神経を使わなくても、単純にカン違いっぷりが楽しめたし、
ストーリー自体、(大塔宮-は多少、時代背景の予習をしておく方が
ベターだが)シンプルなのに演目としての盛り上がりや見せ所が多く、
「観て良かった」と心から思えた上演だった。
---------------------
富助さんの三味線(恋娘-の城木屋の段)は気品があって、
ポロン、ポロンと少ない音数に情緒があって、やや硬めで歯切れの良い音に
いつもほれぼれ。
そして、「チャリ場に千歳大夫さん」は大好き。いつも大笑いさせていただいています。
恋娘-の鈴ヶ森の段は、呂勢大夫さん。
途中
「不便やお駒は夫の為、かかる憂き身の縛り縄」のくだりで、
夫を「つま」と語っており、あれっと思いましたが、
(この段のほかはすべて「おっと」)
後で床本を確認したら、「つま」と振り仮名がありました。
よく調べていないのですが、詞章としての字数が重視されているのでしょうか。
最後にどんでん返しがあるとはいえ、大半は、刑場の露と消える娘を
思う両親の鎮痛な嘆き。静かなのに緊張感の高い場を、大仰にならず
品好く語っていらしたと思いました。