神奈川絵美の「えみごのみ」

文楽 バックステージツアー

横浜の呉服屋「じざいや」さんの企画で
国立劇場の舞台裏見学をさせていただく機会を得た。


この日の私は、「小倉貞右先生セット」。
栗繭の市松生地に貝紫の刺しゅうをほどこした軽い附下に
アカンサスの帯。


演目は、舞台では121年振りの上演という「大塔宮あさひの鎧」より
六波羅館の段と身替り音頭の段、そして
「恋娘昔八丈」より城木屋の段と鈴ヶ森の段。
これらの感想や、ご一緒したお友達の装いは次回の更新で……。

さて、終演後にまず案内されたのはコチラ

名前の書かれた札がたくさん。
各々、到着したら自分の札を返して黒字にする。
「もうみなさん帰ったので、全部赤字なんです」と話すのは
桐竹勘十郎さんのお弟子さん、勘次郎さん。
ちなみに、文楽の出演者は終演後すぐお帰りになるそうで
「みなさんと同じ地下鉄に乗ることも」。


こちらは人形遣いが履く下駄。
各々の身長と、舞台の高さに合わせてオーダーメイド。
鼻緒はとても太くて安定感大。
なにぶん高さがあるので、挫いたり抜けたりしない仕様に。
勘次郎さん(写真右)が手に持っているのは勘十郎さんの下駄。
底にはすべり防止のため、わらじを巻きつけるようにしている。

見難いですが……

わらじの中央あたり、黄色い結び目が見えますでしょうか?
これは三味線の二の糸。
わらじをしっかり括るのにちょうど良い
(一の糸は扱いにくく、三の糸は強度が足りない)とのことで、
昔からここには必ず使えなくなった二の糸を再利用しているそう。



写真左は、「恋娘-」で登場した馬。
「ぼくより年上だと思います(笑)」よく見るとあちこち傷みが…
歌舞伎は二人入るが、文楽は黒子が一人で扱う。

一人で扱う人形も(写真右)。
「これはツメ人形と呼ばれるもので、下から手を入れて
人形の右袖をつかむようにして持ちます」
いわゆる文楽の人形の面は、三枚目とか娘とか、顔が決まっているが、
ツメ人形は「顔は自由なんです」とのことで、
この人形はひょっとこみたいなひょうきん顔。



舞台から客席をのぞんで。
写真右の衝立のような部分、実は
「(衝立の)上辺が文楽での「地面」なんです」
この写真では左にちょっと人が写り込んでいますので、
高さ…というか、深さが想像できるかと思います。



義太夫や三味線方が座る床も
見せていただきました!
この写真は、裏から見たもの。予め、次の場の
義太夫、三味線方が待機していて、出番がきたら
人の手で、ぐるっと回して客席側へ。
背景は金と銀が表裏となり(この写真は金)、
だいたい切場は金、がスタンダードだそうだが、
義太夫の中には、切場でなくても自分の出番のときに金を望む
人もいるそうで、
そうなると調整が結構たいへん……と、裏方さんがおっしゃっていました。

写真右、各人の「マイ座布団」が決まっており、
出番前にさっと出せるようにしておくのも裏方さんの仕事。

そして必ず、出番前には塩をまくそうで、足元がざらざらしていました。



身替り音頭の段の子どもたちと記念撮影。


そして楽屋。部屋によって8~12畳の広さがあるそうですが
お弟子さんも一緒に4人ほどで使うとなると、やや手狭な気も……。


以上、勘次郎さんのお話をすべてご紹介できたわけでは
ないのですが、印象に残った事柄を中心に、まとめました。
普段は入れない、見られないバックステージ。
表から見える端正で幻想的な世界とは違い、「仕事場」そのもの。
キャリアの浅い人は、あるときは幕を引き、その後でツメ人形を持ち、
それが終わると師匠の身の回りのことを……というように、
物語とはまったく別の時間を過ごしている。
そんな中で、ある一場面だけ人形を遣う、ということもあるそうで、
気持ちの切り替えがたいへんなのではないかなあ。

裏方さんも含め、たくさんの人の支えが垣間見え、
観客の私も一幕ひとまく、大事に観ようと思いました。

コメント一覧

神奈川絵美
yukikoさんへ
こんにちは
いえいえだいぶ、端折ってしまって…。
適当なレポですみません。
この日は楽しかったですねー。着物でお食事、
鑑賞、そして舞台裏まで…。
yukikoさんの帯&道明の取り合わせ、お互いが
引き立っていてとてもステキでした!

舞台裏って、ホント表とは違いますよね、本番中も
きっと人がいい舞台にするために、
慌ただしく行き交っているのでしょうね。
神奈川絵美
すずらんさんへ
こんにちは
私もすずらんさんにお会いできて嬉しかったです~。
とてもお久しぶりでしたよね。
私は初めてのバックステージで、
ついつい「アレは?コレは?」と勘次郎さんに
かぶりつき(笑)で訊いてしまい、お恥ずかしい…。
レポも、人形が登場する幕のことや、足音のこと
など端折ってしまいました。

2月も見応えありそうですよね。またいつか、お会いできますように
yukiko
こんばんは。詳細なバックステージツアーレポ、ありがとうございます!
楽しかったですね♪ 出待ち状態の時に「素」の大夫さん達にお会いして「あら、こんなに小柄な方だったのね。なのにあのパワフルな声!」、裏では「へぇーこんなふうになってるんだー!」と驚きの連続でしたね。
絵美さんのはんなりしたお色の付け下げとアカンサス帯、上品なクリスマスコーデで素敵でした☆
すずらん
こんばんは。
慌ただしくお別れしましたが、お会い出来て嬉しかったです。
私はこの企画2回目だったのですが
前回の開演前よりゆっくり見学できました。
開演前の緊迫した雰囲気もそれはそれでよかったんですが。
絵美さんの勘次郎さんへの的確な質問、さすがジャーナリストと感心しました。
レポートもわかりやすくて流石です。
また次の東京公演も楽しみですね。
神奈川絵美
朋百香さんへ
ご一緒できて楽しかったです
私、文楽はやっぱり、浄瑠璃が好きかなーと
思います。義太夫と三味線、だんだん演者の個性も
わかってきて、じっくりと語りを聴くのが
とても楽しみ。
『大塔宮~』は120年も上演がなかったとは思えない
名作だなあなんて、思いましたよ。

私も朋百香さんのトナカイ(万葉)帯、
直に観られて嬉しかったです。朋百香さんの
雰囲気に、とてもよく合っていて、ステキです
神奈川絵美
香子さんへ
こんにちは
ご一緒できて楽しかったです~
呂勢さんも結果的に出待ちしちゃったし
あの、裏方さんが「床」を廻すところ、
すごく力が要るんだなって実感しました
(二人乗っているのですから、当然といえばそうですが)。
身替り音頭の子どもの浴衣が
ちゃんと絽になっているのにも感心しました。
朋百香
http://www.tomoko-358.com
絵美さま
楽しかったですね~。
文楽に嵌る気持ち、よく分かりましたぁ。
歌舞伎のような華やかさはないけど、独特の
雰囲気、「身替り音頭」のメロディーがずっと
残ってました。日本人の感性って凄いな~と
改めて思いましたよ。
絵美さんの「アカンサス」1年ぶりに拝見出来て
嬉しかったわ~。
香子
楽しかったですね♪
勘十郎さんの出待ち状態だったり(嬉)
楽屋暖簾前でミーハー写真取ったり(喜)
きゃっきゃうふふでした~
神奈川絵美
とうこさんへ
こんにちは
お人形、バックステージに置いてあるときと、
舞台で動いているときでは、同じものとは思えないです。
表情まで違うような・・・不思議ですよね。

小倉さんのこの附下の色、大好きです
ぜひぜひとうこさんも…
とうこ
このツアー、行きたかった~~~
人形に本当に魂が灯りますよね。手の先が生きているみたい・・・。
絵美さんの小倉さん、とても柔らかくエレガントで素敵。
絵美さんの微笑みにピッタリです。
いつかは!と思うものが、また出来てしまいました。(物欲が~~~!!)
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

※ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「着物deオフタイム」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事