庭先に伸びた花枝に、思わず声を上げたら
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「ああ、それはアセロラ」 と、父が答えた。
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このあたりは、たまたまなのかも知れませんが
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梅と桜の間の時期に、写真のようなアセロラの木があちらこちらで
ソメイヨシノに似た、薄ピンクの花をつけます。
でも、桜よりずっと見ごろは限られ
たった2、3日で散ってしまいます。
だから今まで、気づかなかったのかも知れません。
庭にはほかに……
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「じゃがいもを植えたら、葉が出てきた」と、父。
その横には、ヨモギも。
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もう、世話ができないからと、大きな木はほとんど切り落とされ
その跡には小さな鉢が…
この小ささに、父の生来の“まめさ”があらわれています…。
それでも…
82になり、ここ一年ほどでまた格段に、動作が遅いなあと
感じさせられることが増えた父。
例えば朝、着替えるといって寝室に戻ると、10分は出てきません。
靴を履くのに、かかとを靴ベラで押し込むだけで数分はかかります。
買い物に行き、セルフレジで出てきたおつりを、財布にしまうのに
すごく時間がかかって
「おつりとレシートをおとりください」との、機械からの音声が
何度も何度も、結構な音量で繰り返されます。
でも、私は今のところ、手出しはしません。
時間はかかっても、本人ができることは最後までする方がいい、と
考えるからです。
別に、機械からの「おとりください」アナウンスに配慮して
父をせかしたりする必要はないわけで、
機械には、言わせておけばいいんです。
高いところのものをとるとか、普段行きにくい2階の掃除とか
危険がともないそうなことは進んでフォローするようにしています。
故郷には、ここ(神奈川)では信じられないほど
時間がたっぷり、たっぷりあって。
何事もゆっくり、ゆっくり進むことは、
実は、私にとってはとても贅沢であり、
「焦んなくていいよ、だいじょぶだよ」と父にかける声は、
実は、私自身に言い聞かせている、そんな風にも思います。