神奈川絵美の「えみごのみ」

心が喜ぶお茶会 2017 その2

(前回の続き)

午前中、本降りの雨模様だった空も

昼からはこんなに澄み渡り。


                                  (撮影 岡田知子さん)
自然の恵みで、雫がキラキラ光る
お茶会には理想の景色となりました。

今回、ご一緒したのは……

イラストレーター 岡田知子さんと、夏のミュージカル以来かな?のYさん。
知子さんは明るい金茶色の色無地、Yさんは優しい赤味のある焦げ茶の訪問着。


お二方とも、お太鼓の形が綺麗


お昼ごはんの後に、晴れた空の下で撮影大会。
左下にYさんの影が写っている、この日唯一のスリーショット

さて、お席の方は……



雨が残る午前中に、表千家のお薄の大寄せへ。


お軸は「白珪尚可磨」。
清らかな玉はさらに磨く努力をすべし、というような意味で、
名前を失念してしまいましたが(椿の仲間)、
ちょうどこの白い珠のような丸いお花と呼応するような文言。

お道具も、お釜は確か七宝の彫柄があったり、
衝立も山水画の名作を模していたりなど、一つひとつじっくり
鑑賞したい名品揃いでした。


そして、陽が射してから富士見亭へ、こちらは立礼です。

この眺め!

五島慶太氏が亡くなる2年前に造ったお茶室だそうで、
「最後のさいごに、本当に趣味的な(本人が愉しみたい)
茶室を造ったということなのでしょうか」と、席主の佐藤宗香先生。
まるで景色が一つの舞台のよう。
お釜から立ち上る湯気が、背景と重なり合い溶けていくようで
内と外の境界が、あいまいになる感覚を得ました。

現実だけど、現実でないような、
夢ではないけれど、夢のような。

畳にゆらゆらと映る影すらも、幻想的。
うっとりとしてしまいました。

写っていませんが、撮影側には赤味を帯びたテーブルがあり、
お客はまさに、舞台を眺めるような格好で着席し、お茶をいただきます。

出されたお菓子は

富山銘菓の鹿の子餅。ふわふわのマシュマロのよう。
「食べにくいのですが、美味しくて惚れ込んで、この柔らかさも
ぜひ楽しんでいただきたいと思って」
佐藤先生の選ぶお菓子はいつも本当に美味しいのです。

お茶碗は、写真はありませんが正客~三客まで唐津焼。
いずれも白っぽい肌で、先生いわく「赤味のあるテーブルに
沈まないよう」お菓子ともに、配色を考慮したそう。


お軸は「松風」。
お釜のお湯が沸くさまをあらわした言葉で、
先生いわく「このお席は、景色が主役なので、お軸はあえて
シンプルにしました」とのこと。

こうした細部にわたる心遣いを知るにつけ
私も人に対してやさしくありたい、
丁寧に思いやれる人でありたい、と素直に思います。
「心が喜ぶ」って、こういうことなんだな、と
今年も再認識したお茶会でした。

コメント一覧

神奈川絵美
Medalogさんへ
こんにちは
おっしゃる通り、お茶会は「おもてなしの心」が
一番、お客にとっては嬉しいものですよね。
私は亭主、席主になることはないでしょうけれど、
今回のような場を通して得た嬉しさや感動を、
日々の自分の生活の中で
何等かの形で活かせれば、とは思います
富士見亭のこの景色、本当に良かったです
Medalog
ロケーションからお席の中まで、なんて素晴らしいのでしょう。
このような贅沢な空間が楽しめるのは、お茶席ならではかもしれませんね。
特に富士見亭での絵美さんの感動が手に取るように伝わってきます。素敵な雰囲気のおすそ分けをいただきありがとうございます。
お茶席というのは本当に隅々まで神経が行きわたったもてなしの空間なのだと、茶道を少々覗いてみてその奥深さに驚いています。
もし自分がずっと茶道を続けたとしても、亭主となって隅々まで納得のいく一席を設けるなんてことは(それなりの道具があったとしても)一生無理だと今から諦めの心境です。
神奈川絵美
環さんへ
こんにちは
こちらこそ、いつもながら素晴らしいお席を
ありがとうございました
朝方は雨で、ご準備などたいへんだったことと思います。
短い時間でしたが、お話できて嬉しかったです
>「相撲トレ」にピンときて
おお、嬉しいです。
私の着物友だけで5人は買っていただいているので
先生に報告しないと
ホント、着物を愉しむには足腰から、ですよね
神奈川絵美
セージグリーンさんへ
こんにちは
この日の富士見亭は、本当に感動ものでした。
私にもっと、お茶のたしなみがあれば
もっといろいろ説明できたのでしょうけれど、
この景色だけでも胸いっぱい、という感じで…。

五島美術館はロケーションがいいですよね。
規模も大きくなくて回りやすいですし。
>お茶には、洗える着物が
おっしゃる通りですね。
記事では触れませんでしたが、お濃茶の席も
あって、
うっかりお茶をこぼしたりしないだろうかと
どきどきしました
今年もお越しいただきありがとうございました。
お久しぶりにお会いできて嬉しかったです。
絵美さんはアップスタイルがすっかり馴染んでいらして、
より柔らかな雰囲気でしたよ。
少し前の記事の「相撲トレ」にピンときて、早速買いました!足腰を鍛えて一生着物を楽しみたいです。
セージグリーン
日常と切り離された、何と贅沢で
心潤う一時でしょう!
五島美術館には、美術鑑賞のためにのに、伺ったことがありますが、、、。
膝を痛めてお茶時からは遠ざかって
久しいですが、やはり総合芸術と言われる所以ですね。
この時期、(年中?)京都は観光客で大混雑とのこと、富士見亭からの景色を主役に、あえてお道具類を控えめに設えられた先生の深慮遠謀にも敬服します。
どなた様も、季節に相応しい装いです。
お茶には、洗える着物が便利なのですね−。
神奈川絵美
Tomokoさんへ
先日はお世話になりました&楽しかったですね。
ちょうど小雪が過ぎたばかりだったので、まあ白っぽい
着物もいいかな、と。
そうそう、八掛が木村孝先生のお見立てで、茶色なんですよね。
Tomokoさんのお着物も深みある秋色で、背守が可愛くて、帯もとても合っていました

書きそびれましたが、最初のお薄のとき、
私の前にまさか菓子入れが・・・! 
なかなかスリリングでした
Tomoko
今年もご一緒できて、おかげさまで待つ間のお喋りも楽しかったです。
白地のお着物、案外秋も冬も似合うと思っています。白秋だとか霜だとか雪だとかの色、、、でもって絵美さんの小紋の八掛けの色がまた動いた時に秋の色がちらほら見えて素敵でした。
ホントに富士見亭でのひとときは忘れられません!あ、そういえば今回私たち並んで座れたのは富士見亭での一席だけでしたね。席入りのときって、ついついもたもたして遅れてしまい、結局隙間目掛けて座らせていただくしかなくなりますし、もはや飲み方もあやしくなってきた事を実感した私でした(^^;;
神奈川絵美
sognoさんへ
読んでくださってありがとうございます
この富士見亭の景色、
雨露に濡れた紅葉も、お釜からたちのぼる湯気も
そして畳に伸びた影も
ゆらゆらと優しくて、そしていっときとて
同じ景色ではないという意味で、無常を感じさせました

格好つけるつもりではなく、
人にしていただいて嬉しかったことは
自分も人にして差し上げたいなあと思います。
(実際には、できるときもできないときもありますが…。)
心が喜ぶってそういうことかな、と。
特に、着物を着始めてから本当にたくさんの人に
親切にしていただいたので・・・。
sogno
絵美さんの文章もまた心に染み入ります。
ああ、っと読ませて頂きながら私も溜息をひとつ。
夢のようなセカイを疑似体験させて頂きました。
ありがとう!
結びの言葉がね、さらに強く胸に響きます。
他人に対する思いやりの心、大事ですよね。
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