習い事としてのお茶の世界では、
ビギナーの方の足下にすら、及ばない。
そんな不調法でも温かく迎えてくれる
おそらく日本で唯一ではなかろうかというほど
懐の深いお茶会に、今年も参加させていただいた。
表千家不白流、佐藤宗香先生のお茶会だ。
場所は
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自由が丘の大塚文庫。
大江宏さんという、国立能楽堂の建築にも携わった方の
遺作の建物。
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玄関ホールの天井からして、アート。
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ここは2階リビングから、まるでお城の天守閣に通じる
梯子のような、急な階段を上がると入れる
「富士見の間」。
晴れていれば、ここから富士山がくっきりと。
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2階リビングにて。
この日の私は、プラチナボーイの藤色の色無地に、
織楽浅野さんの、変わり七宝の帯。
古帛紗は、松尾鏡子さんの浮織。
ご一緒したのは……
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イラストレーター 岡田知子さん。
この写真は、寄付のお床の前。
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秋色コーデが彼女の雰囲気にぴったり
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帛紗は更紗の布から、ご自身でつくられたとのことで
帯周りとマッチしていて、一つの「世界」ができていますね。
そしてお招きくださったのは……
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美術&音楽友でもある、TMKさん。
秋から冬へ向かう景色を表したかのような
優しい色遣いの一揃い。
お茶会は……
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少し広めの四畳半の小間に、
「喫茶去」の掛け軸。
席主の佐藤先生が
今日はうちの教室での炉開きなんです、と前置きして
「おめでたい日ですから、
初心者の方でも、ベテランの方でも(わけへだてなく)
どうぞ一服のお茶を愉しんでいかれませんか? という
思いを込めました」と。
いつも、いつも、懐が深いなあと思い、
私の中では一言で終わらせたくない、
深いふかい感謝の気持ちがあるのに、
それ以外の言葉が出てこないもどかしさがある。
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香合は温かみのある志野。
水指の柄は縁起の良い万年青(おもと)。九谷焼。
黒栗丸という、栗が入った黒糖の
しっかりした甘味をいただいた後の
何とやわらかな味わいのお薄。
お茶碗は唐津に黒薩摩、白薩摩で
(あ、松尾鏡子先生も唐津在住だった)と
帛紗に目をやり笑みが……。
何かとせわしなかったり、心がちりちりしたりして
時をただただ後ろに追いやっていくような日々が
ここのところ続いていたけれど、
一服のお茶がこんなにも
「自然な時間」の流れるさまを取り戻してくれるものか、と
何か私にとって、大切なものを、思い出させてくれたような
気がして、胸のあたりが温かくなった。