神奈川絵美の「えみごのみ」

初春歌舞伎2018 「世界花小栗判官」 その2

(前回の続き)


晴れ晴れと賑やかな、国立劇場大劇場。


1階フロアでは恒例の獅子舞が。


幕間にお弁当を食べたり……


プチお年賀を渡し合ったり……


(みなが撮った写真をYさんが編集してくださいました)

今年はお友達と5人、やはり大勢だと賑やかで
おしゃべりも弾んで、
新春の喜びを分かち合えるっていいものですね

全員の後ろ姿。

左からYさん、朋百香さん、Rさん、RUさん、そして私。

今回は時間の都合で、朋百香さんの帯周りと裾のアップのみパチリ。

藍と白を基調にしたノーブルなコーデ。
シャネルのツイードもぴったり

さて、演目の方は……


(この先、多少のネタばれがありますので、これからご覧になる方は
ご留意ください)


時代は室町。足利義満譜代の家臣 小栗判官と
足利氏に討たれた新田義貞の末裔とされる稀代の悪党 風間八郎との
宝蔵をめぐる攻防と、
鎌倉執権の娘 照手姫をめぐる三角関係を軸にした物語で

冒頭からいきなり風間が妖術を使い煙と消えたり、
小栗判官が裸の暴れ馬を乗りこなし、高さのある派手な芸をしたり
(ダイナミックな馬の動きに拍手!)
そこここに見せ場があり、展開もスピーディ。

ただ、以前の初春歌舞伎、例えば里見八犬伝と比べると、
今年の演目はやや地味に、私の目にはうつってしまいました。
妖術も目立ったのは最初だけだったし、
大立ち回りも、かつて屋根の上で松緑さんと菊之助さんがやりあった
場面を憶えていると、
今回の、船頭の一団VS松緑さんは計算された型の美しさはあったけれど
はらはら、どきどきは控えめだったかな、と。

そんな中で、鮮烈に心に残ったのは
お代官さまのふりをしようとして失敗する
憎めない悪党 市村橘太郎さん演じる瀬田の橋蔵。

「ワタシ、失敗しないので」と言った傍から
台詞を間違え(芝居の中での話)、片岡亀蔵さんがすかさず、「違うだろー」。
もっと「忖度」して欲しい、といった台詞も。
最後は何とシャンシャンのコスプレ(?)で口上を述べるなど
すっかり客席をもっていきました。

尾上右近さん演じる照手姫はとても淑やかで美しくて、
ルフィと同じ人とは思えません。
時蔵さん演じる恋仇のお槇も、嫉妬に心乱された様子が
よく出ていて、

「女の嫉妬は怖いねえ」と、終演後に着物友とぽつり。

最後は、風間八郎をみなで追い詰めるも
お約束の「今は勝負せず、いずれ」で、登場人物がずらり並び
見得をきっておしまい。
水戸黄門の印籠のごとく、わかってはいてもこのシーンを観ると、
ああ、お正月らしいなあ、と思います。


以前にも書いたかと思いますが、
音羽屋さんの多い初春歌舞伎、声が良くて……特にワタシ、
坂東彦三郎さんが大好きで。
襲名公演には行くことができず、今回が襲名後初めての鑑賞。
出番はほぼ一幕目に集中しており、あまり長い時間お出ましには
ならなかったのですが、
よく通るお声に滑舌の良さ、しっかり楽しませていただきました。

そして最後に、おもな登場人物が客席に手ぬぐいを投げる際、
彦三郎さんの一投が、私に向かって……

はっと手を伸ばしたのですが、シュート回転し、手をはじいて
後ろへとんでいってしまいました。残念……
さすが野球の心得あり、球速(?)すごかったです。

せめて、
「彦三郎さまが、私の着物姿に目を留め、
私に向かって投げてくださったんだわ」と
妄想し、もうしばらくの間、おめでたい気分で過ごそうと思います(笑)




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話はまったく変わりますが
成人の日の今日、きものレンタル業者の雲隠れのニュースが
世間を騒がせており、私も胸を痛めています。

一生に一度の成人の日に、大人の裏切りにより酷い目に遭い
今後、着物を見ればこの嫌な出来事が思い出されてしまう人も
いるであろうことは
じわじわと、きものに関わる業界や、きもの好きな一般の私たちにさえも
可視不可視の別なくダメージを及ぼすでしょう。

「信じる、信じ合う」という、社会生活を送る上で必ず持っていなければ
立ち行かない心の持ちようが、こんな形で冒されるのは、
これも人生経験、などと慰めてフォローできる域を超えています。

人としての純粋な喜びや祝いの気持ちを軽んじる、
「雑」な風土、社会にはなってほしくないな、と今は切に思います。

コメント一覧

神奈川絵美
セージグリーンさんへ
http://blog.goo.ne.jp/kanagawa_emi/
こんにちは
歌舞伎レポ、ありがとうございます
確かにとても寒い日でしたね。舞台は熱かったと
思いますが・・・。
松緑さんはいい感じの貫禄というか、骨っぽい男らしさ、
存在感を増してきましたよね。
梅枝さんから手ぬぐい、いいなああ
セージグリーン
月末の、しかも極寒の平日とあって、着物姿は
少なく、雪国装備の方が多かったですよ。
私も声の良い役者が好み。
菊之助の精進ぶりには目を見張りますし、
松禄が上手くなり、右近、梅枝など若手の成長も
著しいですね。
勝敗が決しない終わり方にはちょっと?でしたが、
音羽屋さんはサービス精神旺盛ですので、
楽しませて頂きました。
私に手ぬぐいをくださったのは、梅枝さんでした。
神奈川絵美
http://blog.goo.ne.jp/kanagawa_emi/
コメントありがとうございます。
私も、開いた口がふさがらないというか…、よくも
こんなことができるなあと。
資金繰りが悪化して、着物もお客さんも「お金」にしか
見えなくなってしまったのでしょうか。
心無いとはまさにこのこと。何をもってしても埋め合わせできないですよね。
朋百香
http://www.tomoko-358.com
絵美さま
レンタル業者の件は本当に信じられない事件ですね。インタビューにお嬢さんはもちろんですが泣き出したお母さんのお気持ち、察してあまりあるものがあります。一生に一度の成人式は親御さんにとっても大きな意味のある記念日ですから。本当に残念。きもの好きの私達としては、悲しい限り。日本人の美徳はどこに行ってしまったのでしょう・・・。
神奈川絵美
sognoさんへ
http://blog.goo.ne.jp/kanagawa_emi/
こんにちは
新年の劇場はとても華やかで、
私も眼福でした

1月は特にお着物姿の方が多いと思いますので
(着物だから目立つ、ということも
あまりないと思いますので)
お友達もぜひぜひ、お着物お召しになると
いいですねぇ
sogno
またまた圧巻の、皆様のお着物写真、ありがとう
ございます。眼福でーす。
近所友が今週末歌舞伎座デビューだそうです。
お着物で行ったら?とけしかけているところなの
ですが、どうなることやら。
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