和太鼓集団「鼓童」の夏の公演に誘っていただいたとき
私の胸は懐かしさでいっぱいになった。
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というのも、彼らが「鼓童」としてデビュー間もないころ、
高校の授業の一環として彼らの演奏を聴いたことがあったから。
今から約30年も前のことだ。
当時、和太鼓だけの演奏はとても珍しく
私は「佐渡からきた伝統芸能の人たち」として観ていた。
(実際、そんな紹介のされ方だったと思う)
確か出演者はみな「はっぴ」を着て、しかも腕も裾も
捲り上げるようにしていたため、
もともと和文化にそう興味のない女子高生たちは
そういういでたちにはきゃーきゃー言うくせに、
肝心の演奏を真面目に聴いておらず、
終演後、生徒指導の先生にたっぷり怒られたっけ。
それから今まで、ちらちらと名前を目にすることはあったけれど
演奏を聴く機会はなかった。
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公演当日、私は秦荘紬の夏物に、
澤田麻衣子さんのアクアリウム帯で。
帯締めの蛍光パープルがポイント。
夏にはこういうパーリィな色が合うと思っている。
帯揚げは、きねやさんの黄色い星の飛び絞り。
秦荘は、梅雨が明けるともう暑過ぎるから、
これでいったん、着納めかな…。
朋百香さんは
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ペールグレーベースに、細い縞が五月雨のようにも
滝のようにも思える夏塩沢。
そして帯は、古くからお付き合いがあるというぎをん斎藤さんのものだそう。
デザインされているのは波に帆かけ船。
古典を受け継ぎながらも、モダンにアレンジされて、
芸術に造詣の深い朋百香さんのキャラクターにもぴったり。
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赤坂ACTシアターにて。
さて、今回の演目「打男 DADAN」は
玉三郎さんがプロデュースしたことでも有名。
海外公演も成功させているそう。
……公演を観て思ったのは
(時代とともに変わっていくものだなあ)という、
文字にするとあまりにも、当たり前なこと。
昔ははっぴを着て、地域のお祭りをダイナミックにしたような印象だったが
今はタンクトップにキラキラのロゴ入り。「和太鼓版エグザイル」みたいだ。
(悪い意味ではありません)
楽器も、昔は和太鼓オンリーだったのに、
今回は、正式名称を知らないが大きな木琴が登場、メロディーを奏でていた。
ときどきちょっとした「お笑い」もあって
世界を舞台に実績を積み重ねてきた余裕を感じた。
そんなことに、しみじみしつつも、一方で
出演者の「筋肉」にほれぼれ。
背筋、大臀筋、ハムストリングス
……私もあんなに鍛えられ引き締まった筋肉が欲しい!
かつて、「はっぴ」を捲り上げたくらいで
きゃーきゃー言っていた女子高生は
今や、上半身裸になっても、
(あの筋肉を鍛えるにはどうしたらいいんだろう)と
真面目に見入る大人になってしまった。