私の友人(幸太郎さん;仮名)の話です。
幸太郎氏は、某社の広報部門を統括しておりました。
大勢の部下を抱えその会社の広報で重責を担っていましたが、或る時、その会社の不祥事が発覚しマスコミに叩かれるところとなりました。
当然の事ながら、幸太郎氏は責任者としてプレスの矢面に立つことになりました。
ところが、その会社のトップは、不祥事を認めようとせず、責任逃れのコメントを用意させようとしていたのです。幸太郎氏は、焦りました。リスク対応として最悪のシナリオとなることは明らかでした。このような場合は速やかに非を認め、再発防止の対策を講じ、責任者は監督責任をとって、その組織から去るべきです、最高責任者とは、常にそのような覚悟をしていなければならないのです。
このようなことを幸太郎氏は、部下に常々話していました。まさか、そのような事態が自分の会社で起こるとは!
一晩考えて、辞表をしたためました。
翌日の経営会議で、広報対策として出席をもとめられました。懐には昨夜認めた辞表が入っています。
あらゆるリスクを想定し、エヴィデンスに基づいた正確な情報開示と謝罪、対策を盛り込んだコメント文を会議で説明し、経営者の理解を求めました。もし、採用されなければ、その場で懐の辞表を出す覚悟でした。長い沈黙のあと、経営者は決断しました。
これで最悪の事態はひとまず回避できましたが、これからの後始末が大変です。
広報の部下たちは、本当に心配しておりましたが、幸太郎氏は経営会議の結果のみを淡々と伝えただけでした。
その後経営者は一掃され、ガバナンス強化の組織が立ち上がりました。幸太郎氏はその部門の上級スタッフとしてプロモートされました。
彼の懐には常に辞表が入っていますが、それは誰も知るところとはなりませんでした。
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