私の叔母は、敬虔なクリスチャンで一生独身を貫き、看護師としての人生を全うして亡くなった。97歳であった。
太平洋戦争を経験し、従軍看護師として戦地を転々とし、数々の修羅場をくぐり抜けて復員したそうだ。そのキャリアを買われて、当時としては極めてまれな、県の健康福祉課の課長となった。
その後は、県下の病院の看護師長を歴任し、退職後は地元の看護短期大学の教授として後進の指導にあたった。叔母は、自分の過去については一切語らなかった。もちろん、戦争中の修羅場の話も一切せず。退職後、春の叙勲の候補として通知が来た。
叔母は、叙勲を辞退した。私はその話を聞いた時、なぜ!と思い、叔母になぜ辞退したのか質した。
「私には、もったいない!こうしている間にも、日夜寝食を忘れて看護の道にまい進している後輩たちの存在がある。それが私の勲章さ!」と言ったのだ。
なんという人なんだろう。
叔母が亡くなった時、お別れの会で牧師さんから、色々なエピソードを聞いたが、初めて聞く話ばかりであった。アフリカの難民に資金援助していたこと、富山県の山村でボランティアをしていたことなどなど。
自らは施し、対価を一切求めず、口にも出さず全てを心にしまい込んで、人生を閉じた。
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