先日インスタグラムで知り合いの染め屋さんの衝撃的な投稿を発見しました。
ん?
何か見たことある模様
ん?
ん?
アイツ(二四萬柄)じゃん!!
型付けされとる!!!
ご本人から知るのではなく
SNS 投稿から知る。
時代ですねー
そんなことはともかく型付けです!
型付けというのは型紙を使った染めの最も重要な工程で、
型紙の上から染料を防ぐ糊をヘラで捺し、型紙を移動しながら柄を繋いでいく工程です。
型染めの行程の中では最強に難しい工程と言えます。
(まぁどの工程も難しいんですが)
この投稿された写真1枚にたどり着くまで一体どれほどの道のりがあったことか.....
うまく語りきれる気がしませんが順を追って話してみようと思います。
写真の模様の型紙制作に着手したのは今年の4月の頭。
5月22日から始まるカタコトの会展に展示するための作品制作でした。
カタコトの会展とは
伊勢型紙を作る人、使う人、愛する人を中心に、日本の伝統の染織りの作り手や伝え手が集まり何か事を起こそう、ものづくりの可能性を発信しよう、と集まった有志の会が行う年に1回の作品展。
元々私にとっては「未知の生物」であった型染めを行う作り手の方々と交流する事で様々な学びが得られ、意欲的なモノづくりにチャレンジできる最高の場所✨
なんせ私の仕事のお客様は染め屋さんですが、染め屋さんに商売抜きで評価(感想)をいただける場はほとんどない!
ので、展示会という形で自分の作品がたくさんの関係者の目に触れ、自分の技術についてあれこれお声を頂けるのは本当に本当に糧になるのです☺☺☺
さて、くだんの型紙に話を戻します。
あの型紙は「不死を願う」縁起の良い模様として考えました。
不死=二四
として、24万個の穴を刻み、ひと型彫り上げてみようと....
数を決めると必然的に柄が細くなる。
しかし細くなるとあまり紙を重ねて彫ることもできないため、6枚が限界。
じゃあ型紙1枚あたり4万個は穴を刻むデザインにしないとな...
4万✕6枚で24万
24万!
/どーーん\
(だからどうした)
(図案の変遷。ピンク図案を渋紙に重ねて彫る)
謎の思いつきにより始まった型彫りは、自分史上挑戦したことのない細さでしたが、1月半ほどかけてなんとか展示会までに仕上げることができ、慌てて丸めて筒に突っ込み、新幹線に飛び乗りました。
(本当に出発直前まで作業してました。良い子はこんな無計画な大人にならないように)
いざ展示を行うと、
(作品をガラス壁に貼り付けて光が透けるように展示)
ガラスの向こうで染屋さん達が集まって私の作品の前でなにやら笑ったり眉をひそめたり難しい顔をしたり、しかもなかなかその場を離れようとしません。
え!
なになに!?
貶され、ダメ出しされてるの?!
それともまさか褒められてるの?!
それとも何なの??😂
慌ててガラスの向こう側まで走って行きなんとか話を聞くと、
どうやら私の彫った型紙は(読み飛ばし可)
・細かすぎて紗張りができないから裸で使わなければいけない→今回使用した紙は彫りやすさに重点を置き薄く弱々しい紙。
・格子柄の部分は縞柄の型紙を染めるのに使う特殊なヘラ(タテガキ)を使用すべきだが、間に点々の柄がサンドされているために、点をタテガキで上手く糊を置くのは至難の技。→そんなこと全く考えずにデザインしてしまった。
要するに。
よく言えば今までになく斬新かつ繊細なデザインの型紙
悪く言えばとても脆くて危なっかしくてどう染めたらいいのか悩む染屋さん泣かせな型紙
もともと数的チャレンジ!技術へのチャレンジ!と思って、まともに染め上がることなど期待せずにとにかく彫りあげれば練習になる!と思って取り組んだ型紙でした。
紙も小刀も自分の技術も
いろんな条件が揃わなければ、本当に難しい柄をきちんと反物にまでたどり着かせることはできない。
そんなに簡単なもんじゃないと思っています。
色々とルールを無視したとんでもない型紙のようなので、染めるのは難しいだろうと思いましたが😢
念のため染屋さんに託してみようと展示会の片付けの最中に思い切って小紋師の藍田愛郎さんに型紙を託してみることにしました....
あれから半年
型付け作業に入るまでには、あの弱々の型紙に柿渋を塗り、寝かせて丈夫にするという作業を何度か繰り返したことで(渋をする、と呼びます)
紗張りなしでもなんとか使えるまでの強度を確保してもらいました!
実は一箇所、格子柄の部分を切ってしまった部分があったはずなのですが、
(確実に切った。衝撃の記憶がある。)
どうやらこの作業によってごまかすことができたようです。
柿渋すごい!染屋さんすごい!🤗
(人に尻ぬぐいさせて喜ぶな)
こうした下準備に長い時間をかけて頂いたおかげで、あの二四萬柄がなんとか型付けの工程まで辿り着きました。
さて型付けの工程まで辿り着いても、送り口の問題があります。
送り口とは、染め上げた反物を水平に横切るように何度も現れる型紙の柄の継ぎ目のことのことです。
型紙で言うと、上端と下端の水平線
ここが型付けの際に模様をつないでいく結合部分になります。
うまく繋がるように彫っているつもりでも、柄が細くなれば細くなるほどアラが目立つ為、彫師も染師も神経を注ぎます。
その部分も投稿があり
(こちらは型付けが終わり、紺色で染め上がってる生地の状態)
めっちゃ手直しされてる〜!!
どひーー😵
ど、どうやら彫り師たちの型紙はこうして現場ではわりと直されているのは当たり前のようで....😅
手をかけて直した上で継ぎ目を感じさせない静寂な美しさまでたどりつくのが小紋染めの常。
だそうですが、完璧なんかありえないのですが、わかっちゃいるのですが、
やっぱりちょっとショック😂
まあこの手直しをどれだけ減らせるかということも良い型紙を目指す上で大切にしていくべきことだなと再認識しました。
諸々反省はありつつも
とにかくあれが染まった!
まさかあれが染まった!
欲をかいてはいけませんが、もしかしたらもっと色々なものにもできるかもしれない....
いつか誰かが着物として着てくださる日が来るかも....✨✨✨
そして何よりも嬉しかったのが
染め師さんからの
彫りは凄く良かった のひと言。
全私が泣いた😭😭😭😭😭😭
(正確にはモスで一人飯しながら泣いた)
染型紙を彫る人は型紙を使う人のこの言葉が何よりも宝物です。
このようにたった一枚の布切れに、自分の人生がかかったようなくそ重たい挑戦と落胆と喜びと感動が詰まってしまう伊勢型紙の世界。
どうですか?
気持ち悪いですか?
すでにここまで読んでしまったあなたはこの沼に片足突っ込んでると言ってよいでしょう。
ようこそ!😎ニヤリ
さて、私史上一番難しい柄へのチャレンジは更新し続けなくては成長がありません。
何歳まで更新し続けられるのかはわかりませんが、親方を見ている限り70代になっても大丈夫のようです😳
ここで突然の告知
私が技術的なチャレンジする最高の舞台としてのカタコトの会展
2022年の日程が決定しました!
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第5回 型彫り、型染め、カタヤブリ!
2022年5月28日(土)〜6月3日(金)
11:00〜18:00(最終日17:00まで)
会場:江戸からかみ東京松屋4階
〒110-0015 東京都台東区東上野6-1-3
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二四萬柄(フシマンガラ)を展示した
2021年の第4回カタコトの会展について
新型コロナの感染予防対のため『完全オンライン開催』で作品コメンタリー動画や対談、着物談義などのイベント動画を制作し、YouTubeにて配信!
リモートでの工芸ワークショップにも挑戦しました。
動画はHPからどうぞ。
▷カタコトの会HP
来年こそ直接皆様にお会いできるのを楽しみにしております。
気持ち悪いくらいやりこんだ型紙をご披露できることを願って(笑)
来年はもっといい型紙を彫るぞー!
それでは皆様も良いお年を〜(^O^)/